最近Twitter(X)で電子工作マニアの人たちが小型の直流電源装置を触っているのを見かけますが、どうやらアリエクスプレスにて購入できるようでしたので、実際に購入してレビューしてみたいと思います。
なお、既に詳細なレビュー動画がYouTubeにアップされていますので、こちらもあわせてご覧ください。
今回購入した製品(ALIENTEK DP100)
今回購入したのはALIENTEK(アリエンテックと呼んでいますが正解なのかは分かりません)から発売されているDP100という、名刺入れサイズの超小型直流電源装置です。商品ページはこちらです
片手に収まるサイズ感ですが、どうやら32V 5Aまで扱えるという製品のようです。
本体のほかに、
・USB-C to DCジャック(5mm/2.1mm)
・USB-A to USB-A(通信用)
・バナナ端子 to ワニ口クリップ
が同梱されていました。付属品と一緒に本体を収めることができるしっかりめのハードケースが付属していますので、そもそも持ち運ぶことを前提に作られてる可能性が高い商品です。
また、この電源ですが、USB-PDで給電する他にもDCジャックからUSB Type-Cに変換するアダプタが付いていて、スペックに記載されている32V 5Aまで扱いたい場合はこちらを使う必要があります。USB-PDの規格では20V 5Aまでの給電しか出来ません。
ちなみにイチケンが以前動画で紹介した中国ブランドの怪しい安定化電源がありましたが、こちらも(主に危ない実験をする用として)現在まで事務所で元気に稼働しています。
気になる方はレビュー動画もアップしていますので、是非動画も確認してみてください。今回紹介しているような持ち運び可能なものではなく、据え置き型の安い電源を探しているという人はこちらのボタンからどうぞ。
本体の外観など
ここからは今回購入したALIENTEK DP100の外観や動作などをよく見ていきます。
正面には表示用のOLEDがあり、その隣に3つのボタンとクルクルと回すことが出来るダイヤルがついています。出力のオンオフや電圧や電流の設定などはすべてこの部分だけで操作します。
主にUSB-PDで給電することを想定して作られている製品のようですが、最近のスマートフォンなどはほとんどがUSB-Cかと思いますし、USB充電器についてもUSB-PDには大体の製品が対応しています。ですので実際使う場合にも問題になるということは殆どないかと思います。Type-Cのケーブルをつなぐと電源は自動で入ります。
画面の表示をよく見ていきます。
画面内には現在本体に供給されている電源電圧と、出力したい電圧・電流値の設定、そして実際に出力されている電圧・電流値が表示されるようになっています。電力計(W数表示)もある様です。
なお、本体の操作は3つのボタンとローラ1つで行います。■ボタンで設定や、◀▶ボタンでの出力のオンオフなど若干独特の操作性とはなっていますが、そこまで難しい組み合わせはありませんので使っているうちに慣れる範囲かと思います。
性能の測定
ここからはALIENTEKの電源の性能の確認です。本体のディスプレイに表示されている電圧・電流と、実際に出ている数値がどれくらい一致しているかを、普段イチケンが使用しているハイエンドマルチメーターのDMM6500と比較していきます。
電圧と電流の精度
本体の出力設定で1Vを設定した時、マルチメータに表示されている電圧は1.003Vになりました。電流値は0.010Aに対して0.010Aですので、どうやらかなり精度は良いのではないかと思います。
また、5Vに設定したときでも5.001Vと、小数点第三位程度(1mV)程度の誤差に収まっていますので、かなり優秀かと思います。
ただ、今回の測定結果を見るにALIENTEKの小型直流電源装置でも小数点台3桁くらいまでは問題なさそうという測定結果が得られましたので、よほど正確な出力制御が求められない限りはDP100、かなりおすすめできるような気がします。
出力波形
次はオシロスコープで出力されている電圧の波形を確認してみます。出力を5Vに設定して、負荷として10Ωの抵抗を接続詞た状態の波形が次のような形です。
入力された波形をACカップリングモードにして交流成分のみ見ていますが、全体に一定の間隔でスパイク電圧のような波形のトビが見られます。こちらはいわゆるスイッチングノイズです。5μ秒間隔でこのスパイク波形が出ていますので内部の回路は200kHzでスイッチングしているようです。また、スイッチングノイズの振幅は±30から40mV程度乗っています。
また、オシロスコープ右側の波形は入力の波形にフィルタ処理をしたものです。スイッチングノイズは測定できなくなりますが、どの程度スイッチングリプルが乗っているかを見ることが出来ます。
一瞬上がって、そしてその後下がるという波形が電圧リプルになります。この画面は1マスが1mVのレンジで見ていて、そして波形もおよそその中に収まっていますので1mV程度の電圧リプルであると言えます。こういった直流電源装置で、しかも小型のものとしてはかなり良い性能であるかと思います。
また、出力のオン / オフ時の立ち上がりと立ち下がりの波形はこのような形になっています。出力のカットは一気にスパッと切れていて、立ち上がりの際にもオーバーシュートや波形が乱れるような様子もありません。
まとめ
ここまでALIENTEKの超小型電源を評価してきましたが、全体的な感想でいうと非常に良く出来ているかと思います。今回の記事では触れていませんが、中国ALIENTEKの公式サイトへ行くとパソコンにインストールしてUSB接続したDP100をモニター・コントロールできるようなソフトウェアも配布されていますし、この規模の小ささにしてはできることの幅はかなりある印象です。
また、USB電源さえあればいいので、イベントや展示会、あとは大きな電源装置が持ち込めないような環境で特定の電圧源がほしいといった場合にこちらの商品、とっても良いのはないかと思います。
ただ、イチケンが購入したときの価格は45USD程度で入手できたのですが、こちらの製品、定価が95USDという表記になっています。基本的に何かしらの値引きはされているような状況ですので日本円で5000-7000円程度で入手できるとは思いますが、定価の95USDとなると一流メーカーの中古電源やAmazonなどで売っている据置き中華電源に手が届くような金額となっていしまいますので、少し微妙かなといったところです。
もし購入したいという方が居ましたら、上のバナーをクリックすると商品ページに飛びますので、是非検討してみてください。それではここまでお付き合い頂きありがとうございました。
中身について(分解パート)
ブログ記事としてはここまでの紹介になりますが、動画の方では毎回恒例の分解レビューも行っています。詳細なレビューなどは動画を見ていただきたいのですが、ちょっとだけ紹介しておきます。
底面の蓋をあけてすぐに基板裏側が見えています。バナナプラグなどの抜き差しで特に負荷のかかるターミナルの箇所は、メインの基板とはネジで固定されているような形になっていました。
また、このターミナルの部品については別の小さな基板でまとめられており、出力状態の表示に使われているLEDを駆動するため、ピンソケットによってつながるような形となっています。
この他にも搭載されている半導体についての情報など詳しく見たい方は以下の動画をどうぞ。
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