USBハンダゴテを使ってみた 【FNIRSI HS-01】【ALIENTEK T65】

前回の動画ブログ記事ではAliExpressで見つけたALIENTEKというメーカーの小型電源をレビューしましたが、今回は同じくAliExpressで購入できるUSBはんだこてを購入してみました。既に詳細なレビューと使ってみた感想などを動画でアップしていますので、ぜひそちらも合わせてご覧ください。

目次

USB PDはんだこての何が良いのか

まず、今回購入したUSBはんだこてですが、最大の特徴はモバイルバッテリーで使用できるという点です。今回購入したはんだこて二本をAnkerのモバイルバッテリーに同時に繋げている状態ですが、問題なく二本とも使用できています。

コンセントの使えない屋外や現場での作業、車内でのはんだづけなど電源の使えない場面においてもモバイルバッテリーさえ使えればどこでもはんだ付けができるというのはUSB式の一番の特徴です。

ガス式との差

コードレス式のはんだこてとしてはガス式のものが古くから存在しています。ガス式は非常に高い熱を与えることが出来ますので太い銅線であったり熱容量の必要な作業には向いていますが、今回取り上げているようなUSB PDはんだこてについては65Wが定格になりますので、あまり大規模なはんだ付けは出来ません。

ただ、USBはんだこてはガスのチャージやその残量を気にすることなく使い続けられますし、細い配線しか作業しない場合や狭い場所・閉所での作業についてはUSBはんだこてのほうが使いやすいのではないかと思います。

今回購入した商品

今回購入したはんだこてですが、以前紹介したALIENTEKが出しているT65という製品と、あとは見た目がそっくりなFNIRSIというメーカーの出しているHS-01という商品です。この他にもAliExpress上では似たようなUSBで給電できるはんだこてはいくつか出ていますが、今回は二つの製品についてそれぞれ比較検討していきたいと思います。

スペック

まずスペックから確認していきます。ざっと確認した限り両者の製品は同じUSB PD65W定格であったりと、共通している箇所が多いので、まとめてFNIRSIのもので見ていきます。

ALIENTEKとFNIRSI共にこて先の設定温度は80~420℃です。だいたい350℃程度もあれば鉛フリーはんだであっても問題なく使用できるかと思いますので特に困ることはありません。

電源の定格は65Wで、これはUSB PDの20V 3.25Aに相当します。製品内部で電流のコントロールはされているので65Wを大きく超えることはありませんし、後述する設定からUSB PDでのネゴシエーションに切り替えるとその分だけ消費電力は小さくなります。コテ先に与えられる熱量は下がってしまいますが、65Wの出力に対応していないUSB電源であっても本体の設定を変更することで使用することが出来ます。

動作電圧範囲は9-12Vと記載されていますが、これはUSB PDのネゴシエーションが

  • 9V 3A
  • 12V 3A
  • 15V 3A
  • 20V 3.25A

の範囲で行われれることを示しています(設定から任意に変更できます)。今回は試していませんがFNIRSIのセットには、前回紹介したUSB給電の超小型電源にも付属していたようなUSB-C to 5/2.1mm DCジャックのケーブルが同梱されていましたので、直流電源から直接給電する場合にはこの電圧の範囲内で使用しろ、ということかと思います。

価格

イチケンが購入したときの価格について、今回はどちらの製品も本体とコテ先が5本程度セットになったモデルを購入しています。ALIENTEKは約5,800円、FNIRSIが5,000円と少しだけFNIRSIのほうが安く購入できました。

また、購入当時(2023年11月頃)はAliExpress上で独身の日セールブラックフライデーセールサイバーマンデーセール が立て続けに行われている時期でしたので、予備のコテ先の付属していない一番ミニマムなセットではそれぞれ約3,600円程度、さらにクーポンを併用することで2,000円台で購入することもできた様です。

また、こちらは100V電源ですので一様に比較はできませんが、同じ調温はんだこてとしてイチケンが度々紹介しているgootのPX-280が約6000円弱ですので、温調はんだこてが3,000円前後で購入できてしまうというのはかなり驚異的なことかと思います。

実際に使ってみる

それでは実際にはんだこてとして使用したときの動作や使い勝手などを見ていきます。本記事ではALIENTEKとFNIRSIについて交互に取り上げていますが、動画の方ではそれぞれ尺を取ってレビューしていますので何卒ご容赦ください。特に差異について述べていない限りはどちらの製品であっても同じような使用感となります。

消費電力

消費電力ですが、350℃設定で特に何もしていない時で大体5~10W程度の消費となっていました。加熱のコントロール自体は内部でPID制御されているようで、コテ先の温度に応じて出力のパーセンテージがリニアに変化します。

濡れた布巾を押し当てて強制的に100%近く出力を引き出してみると、だいたい50~60W程度消費する動作になっていました。コテ先が小さいなどはんだ付けする場面によっては不利になることがありますが、これだけの勢いで再加熱されるようであれば十分かと思います。

ただ、電源投入時を含めて非常に加熱が早い一方で、ALINETEKのT65に関しては本体のOLEDに表示されている数値を見る限り、PIDの制御が少々暴れて若干発振しているような場面が見られました。一方でFNIRSI製のものはどうかというと、初期加熱時のオーバーシュートを防ぐような制御が確認できたりと全体的なコントロールの正確性の面において多少上回っている点があるかな?と感じる結果になりました。

本体の設定について

次に本体の設定について見ていきます。どちらの製品も2つのボタンを同時押しすると設定モードに入ることが出来ます。大体似たような操作感で設定することができる内容自体も非常に似ていますが、よく見てみるとそれぞれ違いもあります。

ALIENTEK T65

まずALIENTEK T65の設定画面です。後述のFNIRSIより多く13(Exitを除けば12)の設定があります。本体に何らかの振動を検知するセンサーが内蔵されているのか非使用時に自動的にコテ先の温度を下げて劣化を防ぐ機能がついていて、その辺りの設定が充実しています。

その他にはコテ先の温度設定を変更するときのステップ数や、電源を接続した際にいきなり加熱を開始することができるのがALIENTEKの設定の特徴です。

FNIRSI HS-01

FNIRSIの方は設定項目自体はやや少なく、9の項目があります。ALIENTEKでも可能でしたが、左利きの人が使用する場合であっても画面の表示を180°反転して使いやすくすることができる他、電源投入時にボタンを三回連打しないと加熱が開始されないチャイルドロック設定などが特徴的でした。

気になった点

次に、使用していて気になった点を上げていきます。微妙ポイントですね。

これはUSBはんだこてだけではなくコテ先交換式のはんだこて全てに言えることですが、コテ先の交換は冷えるまで待つ必要があります。コテ先が抜けないようにネジで固定しているパーツがありますが、ALIENTEKとFNIRSI共に作業中に指で触れてしまっても問題ない温度(だいたい50-60℃くらいでしょうか)になっています。とはいえ使用後のコテ先は200℃を軽く超えていますので、交換の際は十分気をつける必要があります。

なお、ALIENTEKには無い特徴としてFNIRSIの方にはコテ先を保護するキャップが付属しています。

据え置き型のこて台で使用している場合などはそのまま冷めるまで放置しておけばよいのですが、現場や出先ではんだごてを使うという状況を想定した場合、はんだ付けが終わってすぐに次の場所へ移動したいという事があるかと思います。そういった場合にこて先のケースがあると多少冷めきっていない状態でもすぐにケースを付けて収納出来ますので、わりと重要な要素なのではないかなと思います。

また、FNIRSIのはんだこてについては現在供給されている電源電圧の表示が使用中の画面にあります。ALIENTEKの方でも一応現在供給されている電源電圧自体は設定項目1のVol Infoを開くと確認できるのですが、FNIRSIのほうがそういった一段階丁寧な設計になっています。

コテ先の交換、取り揃え

はんだこてを導入する上で一番重要なのが消耗部品であるコテ先の取り揃えです。はんだこてとして使い続けること考えた場合、替えのコテ先が購入できないと導入が難しいかと思います。

実際にAliExpressで見てみると、互換性のありそうなコテ先が大量に見つかりました。実は日本製であるnnnnのnnnnというコテ先と接続する部分などがよく似ているのでコピー製品のようが気がしていますが、多分このあたりの中華製品共通で使える独自規格のような形に中国国内で進化した結果、現在AliExpressで大量に出回っている、という構図になっているのではと考えています。

また、今回購入した二つの製品ですが、それぞれに付属していたコテ先をよく見ると形状や寸法がとても良く似ていました。実際に別のメーカーのこて先に取り替えた所、問題なく使用できました。

いずれにせよAliExpressで今回購入したT65HS01という型番で検索をかけると互換っぽいこて先の取り扱いが大量に見つかりますので、暫くの間は入手に困るという事は無いのではないでしょうか。

まとめ

ここまでAliExpressで見つけた良品第二弾としてUSBはんだこてをレビューしてきました。全体的な感想として想像していた以上に普通のはんだこてとして使用できましたし、温調はんだこてでないと難しい鉛フリーはんだのはんだ付けなども問題なく行えました。

なによりUSB給電ということでモバイルバッテリーさえあればどこでもはんだ付けができるというのは、これまで以上にはんだごての活躍の機械が増えるのではないかと思います。また、USB PDの設定は変更ができますので、必ずしも65W以上出力できるモバイルバッテリーが必要ではないという点も大きなポイントかと思います。

ただし、コテ先についてはラインナップや入手性の面で日本製のものと比べて劣るところがあります。継続的に入手可能かどうか保証はできませんが、それでも同じ規格内であれば他のメーカーから出ているコテ先が使用できることなども判明しましたので、こういった解決策があることを考えれば十分実用的な製品かと思います。

モバイルバッテリーやその他USB PDで稼働することができる電子工作グッズ、どんどん増えていますので、気になる人は是非手に入れてみてください。今回購入した製品のアフィリエイトリンクを以下に貼っておきます。

実際のはんだ付けパートは動画で

本記事ではここまでの内容になりますが、この他にもリード部品に始まり熱容量の必要な生基板へのはんだ付けのほか、チップ部品のはんだ付けなども実演していますので、気になる方は是非動画の方もよろしくお願いします。

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