壊れたSwitchBot プラグミニの故障原因がわかりました。

最近Twitter(X)を始めとしたSNS上で、SwitchBotから発売されているIoTコンセント「プラグミニ」の不具合や故障について言及している人をよく見かけるようになりました。同じようなパターンの故障例が多いのに加えて2024年4月にはSwitchBot公式が「一部プラグミニ交換のお知らせ」を発表するなど、色々と気になる情報が飛び交っています。

プラグミニとはコンセントに繋がる機器をIoTで制御するためのデバイスです。一部のモーターを使う機器や出力の大きい製品を除く全ての100Vコンセントに繋がる機器を、スマホやインターネット越しに操作できるという便利グッズです。

今回はこちらのスイッチボットのプラグミニについて、実際に故障品を入手してその原因を掘り下げていきたいと思います。なお、詳しい内容については既に動画でも公開していますので、こちらもあわせてご覧頂けると幸いです。

目次

不具合について

さて、SwitchBotプラグミニの不具合報告ですが、そのほとんどが以下のような内容です。

  • 購入後数週間から数ヶ月で突然電源が入らなくなる
  • 内部のリレーがON/OFFを繰り返す
  • LEDが異常点滅を繰り返して使用できなくなる
  • etc…

これらの症状については以前からTwitter(X)を含むネット上で頻繁に報告されており、特に酷使した場合に起きる劣化や偶然初期不良品を入手してしまったというよりも、設計や回路に問題があるのではないかという憶測を呼んでいます。

そんな中2024年4月16日にSwitchBot公式から「一部プラグミニ交換のお知らせ」というタイトルで一部製造ロットのリコールが発表されて、どうやら本格的に特定のロットにおいてSwitchBot側に問題がありそうだということで、今回イチケンも本腰を入れて調査することとしました。

不良品の入手

なお、今回調査のためにプラグミニの故障品を譲って頂ける方をTwitter(X)で募集したところ、複数の方からご連絡を頂ける運びとなり、実際に10台程度の故障したSwitchBot プラグミニを入手することが出来ました。(ありがとうございます!)

電源が入らなくなっているものから再起動を繰り返すものまで故障の内容は様々ですが、実際にこれらを分解して故障理由の解析へと入っていきたいと思います。

不具合の動作を確認

故障品の解析に入る前に、まずは不具合品の動作を確認しておきます。

正常動作品はコンセントに繋げた状態で本体側面のボタンを押すと、内部でカチッという音とともにコンセント側の100Vが見えるようになります。また、本体側面のボタン以外にもWi-Fiを内蔵したマイコンが入っているため、スマートフォンのアプリからリモートでON/OFFの切り替えができるようになります。

また、一度リレーをオンにした状態で本体ごとコンセントから抜いて、もう一度コンセントに刺すと次回は自動でリレーがオンの状態になるようです。本体に電池などは入れていませんので、どうやら動作を記憶する機能があるようです。

さて、故障品の動作についても同じく確認していきます。

症状としてはコンセントに差し込んでも本体のLEDが光らない、起動しないものと、中途半端に電源が入ってリレーがカチカチとオンオフを繰り返してしまうものの2パターンに分かれます。後者については前述の通り最後の状態を記憶していて、どうにか通電状態にしようという動作が働いているようです。

当然ですが故障品については本体側面のボタンを押して操作することは出来ません。

リコールについて

SwitchBotが2024年4月以降アナウンスを出しているページでは交換対象として故障しやすいロットの製造番号が記載されています。本体背面に記載されている4ケタの数字が、製造時期の年・月を表します。(恐らく)

今回入手したこちらの故障品の製造ロットは2215となっていました。2022年の15週に製造されたものかと思いますが、これはSwitchBotが公表しているリストの中には含まれていません。購入時期は不明ですが長くても2年程度の使用で故障していますので、家庭用の製品としてはいささか早い故障と言えるかと思います。

なお、後で分かることですが故障の原因についてはほぼ一つの部品が原因でした。ですので公式から公表されている製造ロット番号にかかわらず、原因への対策が行われるより以前の製品については全て故障確率が高い可能性があります。

分解してみる

それではさっそく故障品の原因究明のために分解して内部を確認していきます。プラグミニですが、プラグの出ている面がケース全体と一点の爪で留まるような構造となっており、その部分をこじったり切り落としてしまうと比較的用意に内部を見ることが出来ます。

怪しい部品があった

故障品の中身を見たところ、パッと見でわかりやすく故障している部分、何か爆発していたり焼損しているような箇所は見受けられません。ですがよくよく部品を観察してみるとたしかに怪しいものが見つかりました。

こちらの緑色のコンデンサがその部品です。定格については 10V 680uF の記載があり、おそらくは低ESR品のなにかだと思いますが中国のあまり有名でない謎メーカーの部品かと思います。

さて、このコンデンサの異変ですが主に以下のとおりです。

  • 天板部分に膨らみがある(内圧が高まった可能性)
  • 底面部分から封口ゴムがはみ出している(実際に破裂した可能性)
  • コンデンサの周囲に電解液のような黄色いシミがある(液漏れの可能性)

といった形で、おそらくこの部品が故障の原因と見て間違いなさそうです。特に封口ゴムについては本来アルミ缶と共にカシメられており見えることはまずありませんので、状況としてはかなりヤバめと言ってよいでしょう。

ちなみに他の故障品についても全て分解してみましたが、全て同じこの緑のコンデンサが膨らんでいる形でした。

取り外したコンデンサの試験

さて、この見た目からして明らかに破損していそうな電解コンデンサですが、劣化具合を調べるために取り外して、静電容量などの性能を測定してみました。

故障品から取り外した電解コンデンサの静電容量は実測で87uF、他の個体も検査してみると43uFまで容量が低下しています。定格の680uFと比べるとおよそ10分の1ですので、相当な容量抜けを起こしていると言えます。

また、ESRについても同様で36Ωと本来出るはずのない数値となっています。既に電解コンデンサとしては使い物にならないレベルまで破損していることが分かりました。

中身もみてみる

コンデンサの中身を取り出して見たところ、ロール状に巻かれている電解紙は本来電解液で湿っているはずのところ完全に乾ききっていました。これをコンデンサのドライアップといいます。

交換してみる

取り外した基板に、今度は同じような容量の新品の電解コンデンサを取り付けて動作させてみたところ、問題なく動作することが分かりました。先程まではリセットを繰り返してまったく動作ができなくなっていた個体ですが、このように破損した電解コンデンサを交換することで無事動作することが分かりました。

どこで使われている部品なのか

ここまででどうやら製品内部に使われている緑色の電解コンデンサが破損することで故障しているようだ、というところまで突き止めることが出来ました。

次にこの電解コンデンサが回路のどの箇所で使用されているものなのか、故障の原因を特定するために、実際の基板をリバースエンジニアリングして調べてみました。

回路図で説明

まず、これが実際の製品から起こした回路図です(一部省略)

左側からコンセントに出ている商用電源(交流)の入力電圧、その次に半波整流回路とフィルタ回路があります。交流から直流に整流された後はDCDCコンバーターで更に電圧を低くして、最終的に3.3Vの3端子レギュレータでマイコンやセンサー類に電源が供給されています。

問題のコンデンサですが、DCDCコンバータの出力電圧の平滑用に使われているものでした。弱電系の部品に安定的に電源電圧を供給するために用いられている様です。

動作中の波形を取得

実際に緑の電解コンデンサがどのうような環境で動作しているのかを確認するために、正常動作品を用いてオシロスコープで動作中の波形を見てみました。

  • コンセントに流れている電流(黄色)
  • 問題のコンデンサに流れる電流(赤色)
  • 電解コンデンサの電圧(青色)
  • 電解コンデンサの電圧(拡大波形)

で表示しています。

DCDCコンバータの出力電圧は5Vですので、電解コンデンサの動作電圧もほぼ5Vとなっています。もし電解コンデンサの容量が著しく減ってしまうと、この5Vを安定的に維持することが難しくなるような形です。

電解コンデンサに流れている電流のグラフ(赤色)を見てみると瞬間的に多く電流が流れている区間があることが分かります。これはWi-Fiモジュールが動作する際に、比較的多く電流を必要とするためです。特に後段のWi-Fiモジュールなどが、その動作時に通信時に多くの電力を消費する傾向があります。

この瞬間的に電力を必要とした際に、前述の電解コンデンサが容量抜けによって電圧が下がるようになってしまうと、メインの処理を兼ねているWi-Fiモジュールにリセットがかかってしまいオンオフを繰り返す動作をするようになっているのではないかと考えられます。

故障品の動作時の様子

故障品の動作時の波形も同じ様に取得してみます。こちらは電解コンデンサが容量抜けを起こしている個体です。

MCU内蔵のWi-Fiモジュールが元気に動作しようとした瞬間コンデンサに大電流が流れます。しかしそれに対して容量抜けを起こしている電解コンデンサでは5Vを維持することが出来ず、電源電圧がおよそ3.3V程度まで低下します。

このような現象からプラグミニが再起動を繰り返してしまい、正常に使用することができなくなっているという状況になっているようです。

なぜ容量抜けが起きるのか?

電解コンデンサの容量抜けプラグミニが正常に動作しなくなっていることがここまでの検証でほぼ確定となったわけですが、電解コンデンサがなぜ著しい劣化を起こしてしまったのか、故障原因についていくつか考察していきます。

原因その1

まずひとつ目の原因として考えられるのが電解コンデンサに流れる電流の大きさです。プラグミニはIoT化のためにWi-Fi機能を搭載したマイコンがメインの処理を行っています、このWi-Fiモジュールですがやはり電波を扱うということでこういった小さな製品の規模の中では意外と電流を消費します。

実際にオシロスコープで取得したコンデンサに流れる電流波形ですが、ピークが立っている箇所が(恐らく)Wi-FiモジュールのRF系統が動作しているタイミングです。

本来であればこういったリプル電流に対応するために電解コンデンサが存在しているのですが、そのリプル電流が大きすぎる場合、電解コンデンサに対しても過度なストレスとなります。今回は定格リプル電流などのスペックを調べることは出来ませんでしたが部品の定格を超えていたり、超えないにしても長期間使い続けるにはかなりキツい領域で動作していた可能性があります。

原因その2

電解コンデンサの消耗を早める原因としてもう一つ挙げられるのがコンデンサ周辺の温度環境です。

実はプラグミニのメイン基板ですが、電解コンデンサが並んでいるすぐ裏面に電源系のICが2つ並んでいます。回路図の部分で解説しましたがDCDCコンバータと三端子レギュレータです。

動作中の基板の温度をサーモグラフィで確認してみるとこれらはだいたい5.60℃程度まで発熱していました。

また、オモテ面ではWi-Fiモジュール内蔵のマイコンが別基板に実装された状態でメイン基板に垂直にマウントされていますが、こちらもかなり発熱部分と電解コンデンサの距離が近いです。

これらの部品やモジュールが発する熱は電解コンデンサにもろに伝わるような位置関係にあります。また、今回の測定では外装をバラして基板むき出しの状態で測定していますので、プラスチックのケースで覆ってしまった場合さらに高い温度環境で動作しているものと思います。

また、少し細かい話になりますが、電解コンデンサ(一部を除く)の寿命は使用環境の温度に左右されます。データシートなどでメーカーが公称寿命を設定している場合がありますが、その多くは周辺温度が上がるにつれ指数関数的に寿命が短くなるというものです。

このためスイッチボット プラグミニの故障においても、この高温環境での使用が原因の大部分を占めているのではないかと思います。

原因その3

また、追加の理由として電解コンデンサ自体の品質もあることを忘れてはいけません。

製品メーカーが製品開発を行う場合、基本的に使用する部品については耐久試験などを事前に実施しているかと思います。ただし、ロットごとに特性が揃っていないような品質の悪い部品を組み込んだ場合、製品メーカーが実際に量産を開始するまで不具合がわからないこともあります。

この場合においてはSwitchBotもある意味被害者と言えるでしょう。コンデンサの寿命についても加速試験などを実施して(いることを期待しては)いますが、その試験で使用した電解コンデンサがたまたま高性能な結果を出した場合、今回のように故障する製品が頻出することを見抜くのは大変難しいです。

電解コンデンサが劣化するとどうなる?

それでは電解コンデンサの劣化が進んできた場合、その特性の変化と使用時にどのような症状が出てくるのかを検証していきたいと思います。

電解コンデンサの劣化の進行度合いについて、概ね次の三段階に分けて評価することが出来ます。

  • 劣化前期
  • 劣化中期
  • 劣化後期

それぞれの進行度合いについては定格の静電容量からどの程度減少してきたかで判断します。

劣化前期

劣化の前期は主に静電容量が少しずつ抜けている段階を指します。

使用環境のストレスにより部品としての特性が悪くなったり、電解液が多少漏れ出たりすることで定格の静電容量を保つことができなくなっている状態ですが、それでも一定期間は元と同じように振る舞うことが来ます。

確実に劣化は進行している状態ではあるものの、機器の動作にも影響を与えないため電解コンデンサが劣化してきていることに気が付かない状態が劣化前期です。

劣化中期

コンデンサの劣化が進んで劣化中期に入ると電解コンデンサは電圧の平滑を満足に行うことができなくなり、負荷がかかったタイミングでマイコンの動作する電圧を下回るようになります。

マイコンやセンサー類の動作を支えるだけの静電容量がなくなってしまうと負荷がかかったタイミングで回路がリセットを繰り返す状態となってしまいます。これがプラグミニが故障して使えなくなってしまった状態です。

実験

電解コンデンサの容量抜けによってどのような挙動を見せるのかをわかりやすく試験するために、劣化したコンデンサを外した基板に低用量の別の電解コンデンサを接続して動作させてみます。

結果としてプラグミニはオンオフを激しく繰り返すような動作となり、リレーがひたすらカチカチと鳴っています。ちなみにWi-Fiモジュールの動作に電力が取られる他に、このリレーを駆動するというのも電源電圧が降下する要因の一つです。

このあたりについて詳しく動作を見てみたい方は是非動画もあわせてご覧ください。

静電容量の低下したコンデンサと消費電力の比較的大きな2つの要因が組み合わさることで大変不安定な動作を繰り返す故障品が生まれるのがよく分かりました。

劣化後期

電解コンデンサの劣化が更に進んで劣化後期へと突入すると、今度は性能の低下だけではなく電解液の揮発(ドライアップ)によって静電容量がほぼない状態になります。

今回故障品から取り出した電解コンデンサの静電容量は10分の1程度まで低下しており、その中身を見てみると完全にカワイた状態となっていました。こうなると全くもってコンデンサとして機能しなくなります

コンデンサの上流側で電源回路自体は問題なく動作していても、その先の回路が動作しようとしたときにちょっとした負荷で急激な電圧降下が起きてしまい、結果マイコンがリセットされるような状態となります。これでは製品として動作することはまずありません。

新しいロットでは対策部品が使われている

ここまでの調査でプラグミニの故障品では、内部の制御回路部分、特に電解コンデンサの劣化という問題があることが分かりました。

実は今回の検証に合わせて比較的最近のロットがどうなっているのかを確認するために、新品もいくつか入手しています。イチケンが通販サイトで購入したものと、前述の故障品を提供いただいた際に一緒にお送りいただいたものです。

まずはこちらの製造ロットが2318のものを確認していきます。2023年の第18週に製造されたもので、SwitchBot公式の交換対象リストには入っていないものです。中身を確認してみると故障品と同じく緑色のコンデンサが使用されていました。

こちらは今回用意した中で一番新しいもので製造ロットは2409となっていました。2024年の第9週に製造されたものです。先程のものと同じく交換対象リストには入っていない個体になりますが、中身のコンデンサ部分を見てみるとどうやら違う部品が使われているようです。

こちらの電解コンデンサ、緑色のものからどうやら種類が変わっているようです。680uF/10Vの定格は同じですが、わざわざ違うコンデンサに切り替えたということはSwitchBotが問題を認識したうえで対策部品に切り替えた可能性がかなり高いです。

こちらの銀色のパッケージの電解コンデンサについて分解して中身を確認してみたところ、内部の素子には電解液は含まれておらず全体が真っ黒でガチガチに固まっています。恐らくですが導電性高分子アルミ固体電解コンデンサという固体電解コンデンサの一種ではないかと思います。

対策部品を使用している例として、故障品を分解したものの中にもこの固体コンデンサが使用されているものがありました。製造ロットは2335です。

電解コンデンサの容量とESRを確認したところ定格の性能を維持していましたので、故障の原因は電解コンデンサではなく基板の別の部分が破損しているのだと思います。が、今回はこの故障原因は追わないこととしています。

今回のまとめ

というわけで今回はSwitchBotのプラグミニで頻発している故障について、分解と解析を行ってきました。

使用できなくなっていたプラグミニでは電解コンデンサが破裂していたり容量抜けを起こしている事がわかりました。したがってプラグミニの一定数が自然故障したわけではなく、電解コンデンサの破損が共通の故障理由だと断定してよいでしょう。

電解コンデンサは内部に電解液を使用している都合上、使用場面によっては著しく短寿命化したり破損することがあります。設計や構造上の欠陥や、使用した電解コンデンサの性能が低かったりしたため、故障が引き起こされた可能性が高いです。

今回分解して確認したところ、動作中の内部の温度は開放状態で50℃程度となっていました。これは電解コンデンサを使用する環境としては比較的厳しめの環境と言えます。

ただし、SwitchBot公式も電解コンデンサが原因であることを認識しているのか、新しい製造ロットでは当該の部品は寿命の長い対策部品への置き換えがされていました。先日公表されたリコール対象ロットも2023年上旬までが範囲となっていることから、今後製造された製品を購入するうえでは一応朗報と言えるでしょう。

ただし、これは対処療法的な対策であることを忘れてはいけません。もし根本から問題を解決する場合は回路から設計を変更する必要があったり、また、基板やケースの設計を変更するコストもかなりかかってしまいます。

  • 故障製品を新品に交換するコスト
  • 対策部品を使って製造するコスト
  • 本格的な対処するコスト

この3つを検討したうえで対策部品への置き換えと、一部製造ロットの交換対応となったのだと思います。

さいごに

ここまでプラグミニの故障について原因の究明と評価をしてきましたが、イチケンの事務所でも以前紹介しましたがスマートロックを導入して従業員が鍵を使用しなくても良いようにしていたりします。

IoT製品は振興のメーカーが製造していることから一定のリスクもありますが、便利でコスパの良い製品が多いのでSwitchBotの今後製品展開にも期待したいところです。

それでは最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。動画でも公開していますので、まだ見ていないよという方がいましたら是非コチラもあわせてご覧いただけますと幸いです。

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