AnkerとUGREENの充電器比較してみた。 何が違うのか?

今回は、見た目がほぼ同じにもかかわらず価格が大きく違う、2つの小型USB充電器を比較・検証していきます。後半では分解して中身の基板なども見ています。

この記事の内容は既に動画でも公開していますので、ぜひそちらも合わせて御覧ください。

有名充電器メーカー比較してみた。 何が違うのか?【同スペック, 価格だけ違う。】
目次

今回購入した充電器について

選定条件など

今回USB充電器を選定するにあたって、以下の条件で選びました

  • 30W程度の出力
  • 1ポート
  • 同じようなサイズ感

アマゾンなどで探した結果、AnkerとUGREEN製の製品が見つかりましたので、今回はこの2つを購入しました。

左側がAnker511 Charger(nano 3, 30W)、右側がUGREENNexode mini 30W Chargerです。両者ともここ1.2年でリブランドを図っており、Ankerは511や711など数字での製品グレード分け、UGREENはNexode(ネクソード)というブランドを打ち出しています。

購入価格について

Anker 511 Charger (nano 3, 30W)UGREEN Nexode mini 30W Charger
3,490円2,780円

購入価格ではUGREENの方が700円ほど安くなっています。価格が高い方が高品質なのか、それともブランド分の料金を上乗せしただけであまり変わらないのか、性能の比較など含めて詳しく検証していきます。

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外観

検証の前に、それぞれの製品についておおまかに比較していきます。

同じようなスペック・サイズ感で選定しましたが、実際に2つの製品を並べてみるとそこそこ大きさに違いがある印象です。全体のサイズとしてはAnkerの方が小さい印象です。

両者の特徴ですが、どちらもコンセントに挿し込むプラグの部分は折りたたみが可能になっています。Ankerの方は実は今回購入した製品の前の世代にあるNano 2という、足が折り畳めない製品を出していました。

そちらの紹介動画もありますので、興味のある方は合わせてどうぞ。

スペックについて

諸々の性能検証の前に、製品に記載のスペックを比較していきます。どちらも30WのUSB-PDに対応した充電器です。

パッケージを見る限り、UGERRNの方は窒化ガリウムパワー半導体(GaN)を使っているようです。Ankerの方は特にGaNが使用されているという記述は見当たりませんでしたが、UGREENと比べてもさらに小型の製品であること、Ankerのこれまでの製品を見る限り多分GaNを使用しているとみて問題ないでしょう。

記載されている出力可能な設定については次のとおりです

出力Anker 511 Charger (nano 3, 30W)UGREEN Nexode mini 30W Charger
5V 3A
9V 3A
12V 2.5A
15V 2A
20V 1.5A
PPS

基本的にUSB PDの規格の範囲内であればどちらも概ね対応している(12Vについてはバージョンによって規格外)ほか、どうやらAnkerの方がPPSに対応しているなど細かい調整が効くようです。

PPSはUSB-PDで最初から用意されているPDOよりも細かく、デバイス側が充電器に対して出力電圧と出力電流の指定を行うことができる規格の事です。20mV 50mAづつ指定することができ、一部のSamsung製スマートフォンなどでは急速充電技術として積極的に採用されているようです。

スペックの比較

ここからは性能の評価をしていきます。まずスペックから分かるUSB充電器の性能の一つである

  • 電力対体積比
  • 電力対質量比

の2つを算出しました。こちらの数値が大きいほど性能が高いと言ってよいかと思います。

電力を体積で割ったときの電力対体積比は、Ankerが 1cm² あたり 1.04W 、UGREENは 1cm² あたり 0.7W となりました。また、電力対質量比ではAnkerは 1g あたり 0.78W、UGREENは 1g あたり 0.6W です。

なお、2つの製品の質量についてはAnkerが38.7g、UGREENの方は49.8gと10gほどの差がありますが、実際に2つを手に持ってみると重さの違いについてはほとんど気にならない程度の差でした。

変換効率の測定


次に性能指標として重要な変換効率を見ていきます。

これはコンセントから来た商用電源の100V交流を充電に使う直流電圧にどれだけ効率高く変換できるかを示す数字で、この効率が高いほど高性能ということになります。

Anker

まずはAnkerの方です、30Wという製品ですが、全体的に効率が高い印象で大体 80% 台後半といった測定結果が出ました。最高効率は 15V のときに90.2%と90%を超えてきました

UGREEN

UGREENの測定結果ですが、概ねAnkerの製品と同じような結果となりました。だいたい80%台後半で動作するようです。

最高効率は 15V のときで89.9%でしたので、Ankerの方が少しだけ効率は高いという結果になりました。

補遺

これまでイチケンで分解してきたUSB充電器の傾向から言うと、出力電圧が20Vのときに最高効率となる充電器が多かったのですが、これら2つのUSB充電器については15Vのときが最高効率となっていました。

また、5Vで使用しているときの変換効率もそこそこ優秀な数値化と思いますので、30Wクラスの製品群では65Wや12Wの製品と比べて、多少低めの電力で給電している際の効率を重視しているのかもしれません。

また、こちらの2つの製品のグラフですが、ほとんど同じ形をしていることがわかります。内部の構成にどこまで共通点があるかというのはこのあと分解して確かめますが、回路の構成など共通点は多いのではないかと思います。

充電中の温度も計測した

変換効率測定の次に、使用時の温度変化についても測定しました。計測時の条件はフルパワーを想定してUSB-PDの20Vで30Wを消費させています。

まずAnkerの方ですが、サーモグラフィで見てみると温度分布にムラがあることがわかりました。出力用に少々大きめのトリガーデバイスが刺さっていますが、天板の温度で78℃とやや高めの状態です。

次にUGREENの方です。UGREENの製品の方が本体サイズが大きく表面積も大きいため、放熱の面では多少Ankerに比べて有利となります。

今回計測した温度としては側面部分で64.5℃という数値が最高温度でした。

放熱について

先ほども少し触れた通り、今回の計測環境ではUSB-PDをトリガーするための測定デバイスが刺さっていますので、充電器の発熱具体についてはあまり厳格な測定ではありません。温度の測定結果については参考程度として下さい。

また、実際に使用する際には表面からの放熱以外にも、電源タップやコンセント側からの放熱や、デバイスにつながるUSBケーブルへの熱伝導もありますので、そういった条件が揃うともう少し放熱にも差が出るのではないかなと思います。

また、たまに動画へのコメントで「金属筐体でUSB充電器を作ったらどうなのか」というものがあります。

金属はプラスチックと比較して熱伝導率が高いため、確かに内部からの熱伝導については有利となるかとは思いますが、それは同様に素手で触った際に感じる熱の度合いも上がることを意味しています。同じ60℃台であったとしてもやけどする可能性はかなり高くなるかと思いますので、こういったUSB充電器への金属筐体の採用というのは難しいのではないかなと思います。

スイッチング周波数の測定

性能の評価としてもう一つ、内部のスイッチング周波数についても測定を行いました。内容が前後してしまいますが、オシロスコープのプローブを接続するため既に分解したものを使用しています。測定条件は同様に20V 30W時です。

測定結果を表にまとめると以下のような形となりました。

AnkerUGREEN
125kHz85kHz

Ankerのスイッチング周波数はおよそ120kHz程度でした。負荷によっても変わるかとは思いますが、120~130kHzくらいの間で動作しているようです。その反面。UGREENは大体85kHz程度でスイッチング動作をしているという結果でした。

スイッチング周波数が高いとパワー半導体以外のコンデンサなど、使用する受動部品のサイズを小さくできるというメリットがありますが、同時にスイッチング回数が増えますのでスイッチング損失が大きくなるという、トレードオフの関係があります。

基本的にAnkerのほうが性能は高いのかなといった印象はありますが、このあたりを鑑みると二者の製品にはその設計思想から少し違いがありそうです。

分解して中身を見ていく


それでは次に両者の製品を分解して、その中身の構造からさらにAnkerとUGREENの差について見ていきます。なお、今回の企画では最初に一気に分解しています。

まずは内部の機構についてです。両者ともに30Wの製品としては小型に仕上がっていますが、先に説明した通り両者ともコンセントプラグについては折りたたみ可能となっています。この折りたたみ部分、ざっくり製品の20~30%を占めていることを考えると、製品のサイズに対する回路部分の小ささが更に際立ちます。

部品の実装について

部品の実装について見てみると、特にAnkerの方が部品の実装密度がかなり高くなっている印象です。空間を最大限活用するためにプリント基板が複雑に組み合わさった構造をしており、3次元的な部品配置となっています。

このサイズ帯の製品ではもはや見慣れてきた感のあるこの立体配置ですが、先程測定したスイッチング周波数に対する設計思想の違いがUGREENと比べた時に見えてくるのがわかります。

改めての解説になりますが、スイッチング周波数を高くすると原理的には部品は小さくすることが出来ます。これは回路内で外付けしているインダクタとコンデンサに小さな値のものが使えるようになり、必然的に部品そのもののサイズも小さくすることができるからです。

Ankerの方はスイッチング周波数を高くした分受動部品のサイズを小さくすることが出来ているわけですが、UGREENのものと変換効率は同じ程度という結果が先程の変換効率測定の時に判明しています。

変換効率が同じ程度ということは出力に対する「電力損失」≒「排出される熱」についても同じとなりますので、筐体の小さなAnkerの方がより放熱に気を使わなければならないということを意味しています。

使用されているパワー半導体について

使用されているパワー半導体についてよく見てみます。メイン基板と思わしきこちらの基板に実装されているものが、電力変換の要を担うパワー半導体です。

Ankerの製品で使われているパワー半導体には3606HR05-1の刻印がありました。どこのメーカーのものが使われているのかデータシートを検索しましたがヒットしません。

UGREENの基板には9584F1P1という刻印のされたパワー半導体チップが実装されていました。こちらのチップについても詳細は不明となっています。

こういったUSB充電器などのACアダプタに使用されている窒化ガリウム半導体(GaN)については、1.2年くらい前までの製品ではPower Integrationsというアメリカの企業のパワー半導体を使用している製品が多かった印象です。ですが、ここ最近中国系のメーカーが中国の半導体企業の開発したGaNパワー半導体を採用する例が増えているようで、今回のようにデータシートが見つからないパワー半導体を見かけることが多くなってきました。

Ankerの基板


Ankerの基板構成についてさらに詳しく見てきます。こちらのAnker 511 Charger(nano 3, 30W)では基板は二枚構成となっています。

2枚の基板はこの様に噛み合わさるような構造となっており、変圧器部分の隣には少し大きめの電解コンデンサが入っていました。

使用されている電解コンデンサは全て105℃グレードのもので、Cheng Xというメーカーのものです。Cheng xingchong cheng changと名前の似たブランドがいくつもありますが、正直どういった関係があるのかは把握していません。

こちらの2枚の基板ですが、ざっくり高電圧系(コンセント側から入ってくる100V系)の回路基板と低電圧系(USB-PD出力用)の回路基板の2つに分かれている印象です。ただし比較的すぐに低電圧側の回路に入力されているような構成をしています。

絶縁まわりの設計について

高電圧側の回路と低電圧側の回路の絶縁を図るために、プラスチックのシールド(絶縁板)で覆われていますが、このシールドが基板中央のコンデンサを取り囲むように配置されており、わりとヤバめな設計をしています。

黒いプラスチックの絶縁シールドの中央には円筒形の構造があり、こちらに電解コンデンサがすっぽりと入るような構造となっています。電解コンデンサ自体も基板をくりぬいたスペースに収まるようになっていますが、実はこのコンデンサが横向きの状態ではシールドは取り外すことは出来ません。

コンデンサを斜めの状態にしてはじめてシールドを取り外すことができるようになるわけですが、逆に言ってしまうと組み立ての際には

  • コンデンサをはんだ付けし
  • はんだ付けされたコンデンサにシールドをかぶせ
  • その後コンデンサごと基板のスリットに押し込む

といったような順序でアセンブリをおこなう必要があります。これはかなりトリッキーな技を使っていると言って過言ではないでしょう。(あくまで憶測なので違う方法で組み立てられている可能性もある)

UGREENの基板

次はUGREENの内部構造についても確認していきます。Ankerと同じ様に複数のプリント基板で構成されていて、基板端面のはんだ付けされている箇所を外すと分離することが出来ます。

2つの基板(要確認)の間にはシート状の絶縁体が挟まっており、やはりこれで高電圧側の回路と低電圧側の電気的な絶縁を保っているようです。ただし、一枚の基板上で高電圧と低電圧の回路が一緒に組まれている構造は変わりません。

絶縁シールドを取り外すとこのような基板が見えます。大きなスリットが中央に空いていて、基板自体も力を加えると少し手で変形するような形です。こちらの基板上でコンセントから来た100Vの商用電源がある程度使いやすい電圧に変換され、USBの出力制御回路へと流れていくような構成かと思います。

余談

UGREENの基板構成をみると絶縁されている箇所がよくわかります。

Ankerでも一つの基板上に高電圧系の回路と点電圧計の回路が混ざって存在していましたが、このように基板上にスリット(穴)を設けて物理的に距離を取ることで、空気による絶縁が出来ますし、また先程見えた絶縁シートもこの部分にやってきます。

改めて基板を組み合わせた状態で見てみるとこのような形です。先程見たAnkerの基板よりは部品の実装密度や、受動部品の配置についてかなり余裕があるような印象を受けます。

とはいっても省サイズ化競争の激しいUSB充電器だから言えることであって、他の製品からしたらかなり高い密度で部品が実装されていることに変わりはありません。しかし、Ankerと比べてしまいますと幾分余裕があるように見えてしまうかなといったところです。

電解コンデンサについてはこちらも全て105℃耐熱品で、Capxonというメーカーのものです。

両者を比較してみて

ここまでAnkerとUGREENのUSB充電器について、スペックや効率、内部の構造について比較してきました。

AnkerとUGREENの違いですが、やはりAnkerの方が部品を3次元的に詰め込んでいたり、実装への工夫など設計について洗練されているような印象を受けます。というよりUGREENのものよりかなり小さくなっていますので、ここまで頑張った製品づくりをしないと小さくまとめ上げることが出来ないという事かと思います。

一方でUGREENはどうかというと、こちらは少々部品の配置について余裕があるような設計であると言えるかもしれません。

分解した限りではまだ余裕があるように見えましたのでもっと製品自体を小さくすることはできるかもしれませんが、部品同士の絶縁や放熱のことを考えてこのくらいの設計としている。そんな可能性もあるかもしれません。

もちろん設計の違いはコストに現れる部分でもありますので、一概にどちらが良いとは言えない、そんな印象でした。

まとめ・どちらを選ぶべきか

というわけでここまでAnker 511 Charger(nano 3, 30W)とUGREENのNexode mini 30W Chargerについて色々と比較してきました。性能についてはほとんど同じではあったものの、分解して中身を見てみると全くの別物ということが分かります。

実際にどちらの製品を購入するかについて一番の疑問点かとは思いますが、正直な所どちらでも良いような気はします。特に問題のあるような設計はしていませんでしたし、多少のサイズ感の違いはありますが、メーカーの好みで選ぶ程度かと思います。

一点比較する点としては価格になります。冒頭でも触れましたがAnkerが3490円でUGREENは2780円と、UGREENの方が700円ほど安くなっています。

発熱については気になるが少しでも小さいAnkerを選ぶのか、少しだけ本体は大きくなるが価格の安いUGREENをとるか、その辺りで決めるのが良いかと思います。

今回購入したUSB充電器については以下のリンクから購入できます。

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それではここまでお付き合い頂きありがとうございました。動画についてもまだご覧になっていない方がいましたらぜひ合わせてご覧いただけると嬉しいです。

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