どの乾電池が一番長持ちするのか調査。コスパのダイソーと性能のエボルタ

リチウムイオンバッテリーの普及によって乾電池を必要とする製品は減ってきましたが、あまり大電力を消費しないものや、堅牢性であったり交換できるという利便性重視でまだまだ乾電池が必要になる場面は多いです。

今回はそんな乾電池がどの程度長持ちするのか、メーカーや製品による性能の差からコストパフォーマンスまで、実験を踏まえながら検証・調査していきたいと思います。

なお、このブログ記事の内容は既に動画で公開していますので、まだイチケンの動画をご覧になっていない方はこちらも是非あわせてご覧いただけますと幸いです。

目次

今回用意した電池について

さて、今回の検証を行うにあたり単3型乾電池を全部で12種類ほど用意しました。

基本的には家電メーカーが販売している製品をベースに、その他amazon basicsなどのPB(プライベートブランド)製品や、安価に買うことのできる電池の代表格であるダイソーの乾電池も用意しました。

基本的なスペックと重量などをリストにまとめたものが以下です。

Noブランド使用期限1重量初期電圧2ラベルの向き製造地
01東芝 アルカリ乾電池5年22.0g1.636V揃っていない中国
02東芝 アルカリ110年22.2g1.636V揃っていない中国
03マクセル ボルテージ10年22.8g1.615V揃っている日本
04Panasonic アルカリ乾電池10年23.8g1.615V揃っているタイ
05Panasonic エボルタNEO10年24.8g1.624V揃っている日本
06アイリスオーヤマ アルカリ乾電池10年23.6g1.615V揃っていない中国
07富士通 High Power10年22.9g1.632V揃っていない日本
08三菱電機 長持ちパワー5年?22.0g1.630V揃っていない中国
09アマゾン アルカリ乾電池8年?23.2g1.613V揃っていない不明
10ダイソー &HW (青)7年22.8g1.622V揃っている中国
11ダイソー &GO (緑)7年22.4g1.611V揃っている中国
12ダイソー ALKALINE new (白)7年?23.3g1.611V揃っている中国
※各電池は2022年3月頃に購入した物です3
  1. 疑問符のあるものは、明記されていないが製品から推察できる使用期限 ↩︎
  2. 小数点第四位切り捨て ↩︎
  3. 電池の購入と、これ以降の実験はすべて同時期に行っています(22年3月頃) ↩︎

重量

それぞれの乾電池の差について比較するため、それぞれの項目ごとに比べたグラフを用意しました。まずは重量です。

それぞれの乾電池(今回は単3乾電池を用意)の重さについては、おおむね22gから24.8gの範囲に収まっているようです。東芝と三菱電機の販売しているものがそれぞれ22gと際立って軽量で、その他の製品については徐々に重くなるような分布をしています。

パナソニックのエボルタNEOは最も重い1本あたり24.8gというスペックをしていますが、やはり高出力を謳っている製品ということでなにか高性能な材料が使用されているのでしょうか。

価格

こちらは1本あたりの販売価格をまとめた棒グラフです。今回はAmazonで20本パックを購入した際の価格(一部除く)を元に算出しています。

それぞれの製品の販売価格についてはかなりばらつきがある印象です。家電メーカーの販売する電池の価格が高い印象を受ける一方で、ダイソー取り扱いの3種類の電池が飛び抜けて安く、全体の中最も安価な1本あたり22円となっています。

価格の高い国内メーカー製品の製品についてはその分だけ性能が高くなるのでしょうか。エボルタNEOなどは一時期その高性能さを全面に押し出したプロモーションを打っていたことも印象深いため、非常に気になるところです。追って検証します。

開放電圧

製品購入時の開放電圧も測定しました。製造からの期間は統一されていません。

棒グラフにすると一応傾向のようなものは見えますが、全体の中で最大値と最低値の差は0.02V程度しか存在しません。これを有意な差と言っていいのかわからないため、これらの測定結果についてはあくまで参考値とします。

まず開放電圧が高いのは東芝の2製品という結果でした。1.63V程度です。時点で家電メーカーのブランドが続き、amazon basicのものが一番開放電圧は低く1.61V程度という結果です。

放電試験

さて、ここからはそれぞれの製品の性能評価を行っていきます。放電試験です。

放電試験はデジタルマルチメーター(DMM6500)での電圧監視と自作の2.08Ωの合成抵抗を用いて行いました。本来的には乾電池の仕様を定めた JIS C 8515:2017 などで定められた放電試験を行うのが望ましいのですけれども、今回は試験にかかる手間と時間をあまり増やしたくなかったためこのような対応を取っています。

試験結果

まずは全ての電池について、時間経過ごとの電圧特性をまとめました。なお、以降終止電圧は0.9Vとします。

グラフの横軸が時間で縦軸が電池の電圧です。それぞれの線の色と対応するメーカー名は右記のとおりで、長持ちした順に並べています。上にいくほど長持ちした電池です。

結果を見てみるとパナソニックのエボルタNEOが一番長持ちするようです。時点でパナソニックの無印の乾電池とアイリスオーヤマのものが続きます。価格の高さなのか重量なのかは不明ですが、やはりそのブランド力に見合っただけの性能があるようです。

なお全乾電池をとおして0.8~0.9Vのあたりから一気に電圧の低下が始まることがわかります。グラフの中でいうとダイソー青, 富士通, amazon, マクセル製の電池で特に顕著で、これらの乾電池については他の電池よりも早い段階で容量がなくなってしまいました。

もう少し右の方にあるグループについてはおおよそ2時間以上は安定して動作していました。アイリスオーヤマの製品や、ダイソーの青いものについてもこのグループに属しています。

そして一番右のずば抜けて電圧を維持している時間の長いものが、パナソニックのエボルタNEOです。0.8Vを少し下回る程度までは比較的ゆるやかに電圧が下がり、実験開始から3時間半を経過したあたりでようやく容量がなくなりました。

開始直後の電圧推移

また、放電抵抗を繋いだ直後に電圧がどう推移しているのか、時間軸をぐっと縮めたグラフで確認してみます。

放電抵抗を繋いだあとはどの電池も緩やかに電圧が下がっていきます。ただし放電時の電圧というのは電池の内部抵抗によって変わり、電圧が高ければ高いほど内部抵抗が低いと言えます。

このグラフを見ると容量のときと同じくパナソニックのエボルタNEOが一番高性能となりました。次点で富士通とダイソー(白)が続きます。富士通の電池は先程のグラフでみると電池の持ち自体はあまり良くない印象でしたが、負荷に接続した直後の電圧はわりと高いようです。

終止電圧までの放電時間

先ほど試験の終止電圧を0.9Vにしたと言いましたが、このグラフは「放電開始からその終止電圧に到達するまでの時間」を棒グラフにしたものです。基本的に放電時間が長いほど同じ負荷に対して優秀かつ高性能であると言えます。

一番時間が長かったのはここでもパナソニック系の電池、そのあとは大手メーカーやPB製品がわりと順不同に続き、一番0.9Vの終止電圧に到達するまでの時間が短かったのはマクセルという結果になりました。

このあたりの順位については0.9Vの終止電圧を0.8Vに設定することで入れ替わってくる可能性があるものの、少なくともこのグラフを見る限りでは2時間程度保てば、性能的に問題のない乾電池と言えるのではないかと考えています。

容量測定

次は電池の容量です。

これまで同様グラフの左側にある電池ほど優秀なものとなります。縦軸が電池の容量で、今回はmAhで算出しています。

ここまで継続して1位をとっているパナソニックのエボルタNEOは1619mAhという結果でした。とはいえグラフ全体を確認する限りでは1000-1300mAh程度あれば平均的な乾電池かなと想います。

また、個人的にあまり期待していなかったものの、ダイソーの1本22円の電池がかなり健闘している印象です。今回取り揃えた乾電池の中では少々少なめの5本パックで販売されている激安電池ですが、110円で購入できるという気軽さの割に性能は悪くなさそうな印象です。

補遺

なお、この乾電池の容量について、基本的にスペックを公表しているメーカーはありません。リチウムイオンバッテリーをはじめとした二次電池では重視される容量ですが、恐らく乾電池が使われる機器では負荷の大きさもバラバラでしょうし、使い方によって大きく値が変動してしまう容量について数値を出した所であまり参考にならないのかもしれません。

コストパフォーマンスについて考える

さて、ここまでは各乾電池の持つ容量であったり電圧特性などの性能評価を行ってきました。ですが、実際にどの乾電池を購入するかを判断する際に一番検討しなければいけないのが「コストパフォーマンス」です。

ここからは

  • 容量あたりの価格
  • 1円で何分動くか

の2つについて考えながら、電池の価格も考慮した性能の比較を行っていきます。

容量あたりの価格

先程までは購入価格について「1本あたりいくら」という点で見てきましたが、次は先ほど測定したデータを用いて「容量あたりの価格」についても見ていきます。

こちらの棒グラフは測定した容量を1本当の価格で割ったもので、電池の価格が安くて容量が大きいものほど優秀となるグラフです。グラフ左側にあるほど優秀と言えます。

グラフを見る限りですと、トップ3についてはダイソーが独占する形となりました。時点でamazon basicsと、やはり1本あたりの価格が安いものほど上位になる印象です。1位のダイソー(白)については1円あたり53.9mAhとなりました。

ここで結構衝撃的な結果として、先程まで性能で一位を独占していたパナソニックのエボルタNEOは、容量あたりの価格では下から3番目という結果でした。とはいうもののグラフ全体を確認する限りでは最大でも1.5倍程度の開きとなっていますので、どの程度この指標を重視するかは個人に分かれるところかと思います。

1円で何分動くか

こちらも棒グラフを作成しました。先程の終止電圧に到達するまでの動作時間を電池1本あたりの価格で割ったもので、基本的に価格が安い製品ほど有利になる傾向があります。

そのため、やはりというかなんというか、やはりダイソーの3製品が1円あたりの駆動時間についても首位を独占する形となっています。時点では東芝とamazon basicsが続く形です。

コスパについて考察

ここまでの2つのコストパフォーマンス指標を見る限り、どうやらダイソーの乾電池の低価格さが際立っているようで、容量あたりの価格も1円あたりの動作時間のどちらにおいても一番優秀という結果になりました。

つまり「とにかく安い電池を購入して、電池が切れたら頻繁に入れ替える」という運用がどうやらコストパフォーマンス的には良いという事になりそうです。

ただ、実際に使用する場面のことを考えると一番安い電池を購入することが良いとも言い切れなくなってきます。たとえばダイソーの乾電池においては使用期限が7年に設定されており、これは他のメーカーの10年よりも3年短い設定です。

液漏れについても国内メーカーが製品に「液漏れ防止製法」のような記載を行って製品の差別化を図る一方で、ダイソーの製品ではそういった文言は見つけられませんでした。もちろんダイソーの製品が液漏れしやすい製品だということには繋がりませんが、大手メーカーがこういった付加価値にコストを掛けている分を価格に振っていることは間違いないでしょう。

アルカリ乾電池においては長い期間使用するとかなりの確率で液漏れが起きます。ですので、そういったトラブルを避けたい場合においてはコストパフォーマンスを最優先にするのではなく、液漏れ防止製法を全面に押し出している製品を選択するほうがより良いと考えます。

とはいえ、液漏れする前に抜いてしまうとか、容量を使い切ってしまうのが一番かとは思います。

今回のまとめ

というわけで今回は市販されている単3アルカリ電池について、その性能やコストパフォーマンスについて色々と調査してきました。

単純な性能としてはパナソニック系の電池が非常に優秀という結果が得られた一方で、コストパフォーマンスを重視する場面においてはダイソー製品を代表するPB(プライベートブランド)系の激安電池も選択肢として優れているという事がわかりました。

電池の開放電圧の特性が必要な場面ではエボルタNEOが一番良いのですが、性能が良いだけ価格も少し高めになっています。用途や使用頻度に合わせて製品を賢く選択することが重要かと思いますので、今回の検証がその参考となったら大変嬉しいです。

今回の実験で使用した乾電池

また、今回の実験に使用した乾電池製品については以下にまとめています。もし購入したい方がいらっしゃいましたら是非こちらからお探し下さい。

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※ダイソー製品など、一部取り扱いのないものは除きます
※商品のうち「FDK(株) 富士通 アルカリ乾電池単4 Long Life Plus 20個パック LR03LP(20S)」は撮影に使用した製品の後継製品となります

動画あります

さらにこのブログ記事はイチケンのYouTubeチャンネルで動画でも公開していますので、それぞれの電池の見た目や、各種実験の模様などもっと詳しく知りたい方は是非動画でも御覧ください。

それでは今回も最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました。

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