2023年の11月にソニーがプレイステーション5のスリム版とも呼べる新型を発売しました。中身のスペックこそ変更はないものの、初期型に比べた大幅な小型化や特徴的な白い板の分割などについてイチケンでも分解して詳細なレビュー記事と動画を公開しました。
今回はそんなPlayStation 5に完全上位互換となるPlayStation 5 Pro(以後PS5 Pro)が新発売となりましたので、早速購入して、そして早速分解までしてみたという内容になります。
なお、例のごとく動画も公開されていますので、是非こちらもあわせてご覧いただけると幸いです。
PS5シリーズについて
PS5 Proについて解説する前に通常版のPS5のマイナーチェンジの歴史について振り返っておきます。
2020年の11月に発売された初代PS5ではその後何度かマイナーチェンジを繰り返しており、特に前述の2023年11月に発売されたモデルでは筐体の寸法や内部の設計にかなりの変更が見られました。
PS5のスリム版とも呼べるこの現行PS5について、現在入手できるのは全てこのスリム版に置き換わっています。このため「現行PS5 = スリム版PS5」です。
今回発売されたPS5 Proはこの現行のPS5を置き換えるものではなく純粋な上位モデルとなります。性能が向上したことによってより綺麗な画質でゲームをプレイできるようになったようですが、そういったスペックアップが設計の違いにどう現れているのかなど、今回は分解しながら確認してみたいと思います。
ちなみに
ちなみにPS5 Proについて、実は当初イチケンでは購入とレビューの予定はありませんでした。しかし発売される2024年11月に入っても普通にAmazonで購入できる感じだったので一応レビュー候補としてポチっておいたところ、発売日の7日には到着してしまいました。
ちなみに販売価格は11万9980円となっていて、約12万円です。PS4 Proは5万円以下だったはずなのですが…
最近のガジェット事情からするとこのような人目を引くゲームハードなどは争奪戦になる予感があったのですが、実際のところはそうでもない発売開始を迎えたようです。やはり10万円を超える高額商品であることや、前述のスリム版が発売されてからまだ1年経過していないことなどが影響しているのでしょうか。
販売台数など
ちなみに本ブログ執筆時(2024年12月)時点でPS5 Proの売上推移をファミ通.COMから確認してみると以下のようになっています。
初週売上
PS5 Pro/78086台(累計78086台)
https://www.famitsu.com/article/202411/24209
2週目売上
PS5 Pro/13878台(累計91964台)
https://www.famitsu.com/article/202411/24942
3週目売上
PS5 Pro/10128台(累計10万2092台)
https://www.famitsu.com/article/202411/25730
PS5 Proについてはその価格からお金に余裕がある人か純粋にゲーム機が好きな人しか買わないのでは、という印象を持っていたのですが思ったより販売台数は伸びている感じです。
まずは外観から確認
筐体外観
さて、分解して内部の構造を確認する前に外観を現行PS5と比較してみます。一度初期型からスリム版で小さくなっていた筐体はPro版になって再度大きくなりました。
左が現行PS5(スリム版)で右がPS5 Proです。全体的にタテに大きくなった印象で、側面の白い板の分割部分には3本のブレード状の意匠が追加されているあたりで見分けがつきます。
厚みについてはほんのわずかにPS5 Proの方が大きいかなと言ったところです。スリム版の方はディスクドライブ搭載でPS5 Proはディスクドライブ無しのもので比較しています。(以前分解したものを使用している都合です)
スリム版から各所の性能やそれに伴う消費電力の増加があるかと思いますので、内部の冷却などに体積を使っているのではないかと思います。
スタンドについて
PS5 Proについて、基本的なデザインが通常版を踏襲していることから分かるとおり横置きだと安定しません。通常版にも付属していたアクリルの小さい足が2つ本体に同梱されていますので、通常版と同じように中央に刺すことで横置きが出来るようになります。
ただしこの状態であっても設置している箇所は3点のみでして、何かしらのこだわりがあるにしても非常にデザインを優先しているような印象を受けます。触らないでそっと使用する分には困りませんが、指で軽くつつくとガタガタとして安定性は一切ありません。
なお3点保持のアクリル足ではない所はどこかというと、本体側面の白いカバーの端っこがそれに当たります。
プレイステーションシリーズおなじみの△◯✕□のアイコンのうち、□(四角形)だけが不自然な角度で盛り上がっていることが分かります。これはアクリル足と共に3点で横置きをした際にちょうどよい角度で接地するためにこのような角度となっています。
底面
本体底面を確認してみるとエアフロー用の穴(ベンチレーション)と型番などの刻印があります。
中央の丸い部分はカバーになっていて別売りの縦置き用スタンドを固定できるほか、側面の白い板によってこの部分は地面から浮いた状態で保持されますので、そのままでもエアフローは機能するような形です。
PS5 Proの型番は「CFI-7000」です。通常版PS5がCFIの1000番台と2000番台でしたのでだいぶ間を飛ばしていることが分かります。
製造国の表記は「Made in China」となっていました。Twitter(X)などで入手した人の情報を見てみるとどうやらこの部分が「Made in Japan」になっている個体も出回っているようです。どういった基準でロット分けされているのかは不明です。
IOポート
前面のI/OはUSB-Cが2つそして電源ボタンで、これについてはスリム版と特に変更はありません。
また裏面についても微妙な位置の変更こそありますがHDMI, 有線LAN(RJ-45), USB Type-Aが2口など、並び順から変更されていないようです。
ただし外観、特にこの背面の比較をしていて気になったのですが、全体的に風が抜けるためのベンチレーションの割合が大きくなっています。I/Oポートまわりなんかはある程度の肉厚を残して回り込むように開口が取られているような形です。
このあとすぐに分かりますが今回のPS5 Proでも冷却に用いられているのはシロッコファンが1つだけの状態です。やはり性能を向上させるにあたって放熱や導風経路の確保をこのレベルで行う必要があったということでしょうか。
外装を剥いでみる
側面の白い外装を剥ぎ取って本体の構造を見ていきます。これまでのPS5シリーズ同様に素手で引っ張るとバキッと外すことが出来ます。
一応この分解についてはユーザーが行うことを想定して設計されているためバキバキと取り外すので問題はないはずですが、ある程度力が必要なためちょっと怖いですね。
取り外した外装パネルについては4枚全てがザラザラのシボ加工をされた状態のものでした。PS5スリムで本体上部の2枚がツルツルに変更されていた所、もとに戻っているような形です。
製造や設計の都合でなにかツルツルにすることに不都合があったのか、それとも単純に顧客の反応を見て判断したのか、理由については明かされていないものの一度変更された使用がもとに戻るというのは背景が気になるところです。
ちなみに白い板の裏面をよく見てみるとFOXCONN(フォックスコン)の刻印がありました。PS5シリーズにおいてもEMS大手の鴻海グループが製造を担っているようです。
ちなみにMade in Japanのロットが出回っているということで、そちらはソニーの国内工場で製造されているものと思われますが、このあたりの部品の製造元や実際の組み立て工場などは情報はありません。
白い板が無くなったPS5Proを見てみるとこのような形になっています。上部には22110サイズまで対応のM.2 SSDの入るスロット部分、下部にはディスクドライブ取付用の端子が用意されています。
PS5の通常版ではディスクドライブを搭載していないデジタルエディションと、ディスクドライブ搭載型のモデルが販売されていました。実際のところは本体機能については全く同じで、別売されるディスクドライブを最初から搭載しているか搭載していないかの違いしかありません。
Pro版についてはそもそもデジタルエディションにあたるモデルしか用意されておらず、ディスクドライブは通常版PS5のものを使用する形となっています。
本体中央のあたりになにやら小さいハッチが用意されていますが、これはボタン電池(コイン型電池)の交換用の蓋です。
PS5シリーズはパソコンなどと同様にシステムのバックアップ用のボタン電池が実装されています。これまでの通常版PS5では本体を完全に分解してマザーボードをむき出しにしないと交換できない設計だったのですが、どうやらPro版ではユーザーが簡単に交換できるようになったようです。
とはいっても定期的に交換するようなものではなく最低でも2~3年、おそらくその倍以上は気にしなくてもよいものかと思いますので、どういった層に向けてこのハッチを用意したのかは謎です。メーカーのサポート対応で電池交換が多かったとかでしょうか。
エアフロー周り
まず冷却に寄与していそうな本体中央部にある3本のフィン(スリット)の部分について、これについては完全に飾りのようです。もう少し分解すると裏からネジ1本で留まっていて簡単に取り外せるのですが、スリットの奥は完全に塞がっていることが確認できています。
PS5シリーズは本体上部のファンで吸気を行っています。白い外装板は本来これを阻害するような形で配置されていますのでそのスキマに当たる部分では風が流れており、ここに何かしらの影響を与えているような気はします。が、デザインとしての意匠だとは思います。
ただし上部の冷却ファン近くに追加で配置されたこのエアフロー用のフィンについてはしっかりと機能していそうな感じです。通常版の頃からこの本体前面上部では導風に関わる構造は見受けられましたが、今回のパーツではかなり意図的に導風がなされていそうです。
分解を開始(筐体)
というわけでここからが分解の本番です。外装板以外の本体の構成部品をどんどんバラしていきます。
まずはファンを取り外しました。左が通常版で右がPro版から取り外したものです。
ファンの直径と羽の枚数については全く同じで基本的な設計に変化はありません。ただしファン自体の厚みはPro版のファンが結構分厚くなっていました。
あくまでイチケンの手元にある個体での話ですが、2つともDelta Electronics製でした。よく確認してみると
- 通常版 DC12V / 1.69A
- Pro版 DC12V / 1.86A
と、Pro版の方がサイズアップに伴い消費電力も増加しているようでした。送る風量も増えているかと思いますので、順当な冷却能力の強化と言えるでしょう。
またファンのブレード部分の設計にも変化がありました。通常版では比較的単純なカドが立ったような設計となっている一方で、Pro版ではフィンの一枚一枚の形状が滑らかな設計になっています。また外周と中央のハブをつなぐ全体的な曲率もやや変更が加えられているようです。
また、大きいフィンの間に背の低い小さめのフィンが設けられています。この小さなフィン(羽)についても現行のPS5では見られなかったものです。
その他
ファンの取り外しをしていた時に気づいた細かな変更点として、どうやらファンのケーブルを軽く固定しておくためのプラスチックの出っ張りの部品について改良が加えられているようです。
通常版PS5に比べてPro版ではこの出っ張りの太さが太くなっています。修理の際やユーザーが触った際にポキポキと折ってしまうことがあってのことを受けて改良されたのではないかと思っています。イチケンの個体も既にポッキポキです。
さらに分解(内部の構造)
ここからはPS5 Proのさらに内部を分解して確認します。まずはネジをいくつか取って黒い筐体を2つに開きました。
基板周りも取り出してしまいたいので見えている部品をどんどん外していきます。主に無線系のアンテナケーブルや正面のIOパネルとそこに伸びているフレキシブルケーブルなどです。
ちなみに今回から交換できるようになったボタン電池についてはわざわざ別の基板に実装されたうえでヒートシールドの上にポンとはめ置かれていました。マザーボードとは細い線で接続されており、基板とコネクタとシールドの設計と…と考えるとなかなかコストがかけられている気がします。
内部のこちらの面で一番気になる部品がヒートシンクです。2つの小規模なヒートシンクを2本のヒートパイプが繋いだような構造となっています。このヒートシンクについては特に固定はされておらず、片側が熱伝導系のシリコンペーストで貼り付けられているだけでした。
おそらくは左側の小さいヒートシンク部分についてはマザーボード上にある発熱する部品から熱を受け取り、それを冷却ファンに近い方のヒートシンクで効率的に冷やすという設計かと思います。詳しくは後ほど比較しますが、通常版PS5でも同じ位置にこのような中規模のヒートシンクが配置されていました。
メイン基板周りをごっそりと取り外すとこのようになります。主要な部品は全てこのヒートシールドと基板がサンドイッチされたものについており、外装には機能的な部品は残りません。
電源ユニットについて
電源ユニットを取り外すとこのようになります。比較のために通常版の電源ユニットも取り出して並べてみました。
Pro版では定格容量の変更と、それに伴い電源ユニットの寸法も変更されていました。全体的にやや縦横に引き伸ばされたような印象ですが、設計思想としてはあまり変更はなさそうです。
PS5 Proの電源ユニットの定格は12V/35A、通常版では12/31Aです。Pro版では定格電流で4Aほど出力が多くなっているようです。
念の為中身も確認してみます。どちらの基板も同じような部品配置をしており、基本的な回路構成についても変更はされていないようです。
ただしPro版では先程確認したように出力の定格電流が大きくなっているため、部品のサイズや並列数など各所に強化されているところがあります。また、裏面も確認してみましたが電源制御ICについても通常版とPro版で同じものが使用されており、なにか大きく方式を変えたとかはは無さそうです。
重量で比較してみると
- 通常版 361g
- Pro版 444g
と、ややPro版のほうが重くなっていました。全体的に寸法が大きくなったこともそうですし、電解コンデンサなどの部品の使用数が増えているため重量に現れたような形です。
メイン基板裏面
先ほど取り出したメイン基板に戻ります。PS5シリーズおなじみのヒートシールドにサンドイッチされたメイン基板裏面には結構ゴツ目のヒートシンクが取り付けられています。
とりあえずメイン基板を確認したいのでシールドを固定しているネジをすべて外していきます。スリム版の分解のときと変わらず基板の外周部に大量のネジで固定されています。
シールドを取り外すとこのような形です。こちらはCPUがある面とは反対の面になります。通常版SPS5と全体のレイアウトなどは変わりませんが、結構変更点も多そうな印象です。
PS5 Proではメモリ(RAM)としてGDDR6メモリが16GB搭載されています。これは通常版と同じで実はもう2GB分のメモリがDDR5のチップで追加実装されています。今回分解した個体ではSK Hynixのものでした。
SONY公式からアナウンスメントが無いためあくまで噂レベルの話ですが、この2GB分の追加メモリについてはメインメモリをグラフィックス処理に集中して使うためのものであったり、システム関連の動作に割り当てられるようなものではないかと言われています。
またこちらのダイがむき出しになっているチップと一緒に実装されているのがSSDです。PS5 Proでは標準で2TBの内蔵SSDが実装されており、今回分解した限りでは4チップ(裏表に2枚ずつあります)で2TBとなっていました。
こちらのSSDがチップについては型番を調べてもあまりはっきりとした情報を得ることができず、おそらくはキオクシア(東芝)のBiCSのカスタム品ではないかと思うのですが詳細は不明です。
CPU側のヒートシンクを固定しているバックプレートを取り外すと大量のMLCCが実装されているのが分かります。CPUの電源ライン用かと思います。
また、開いたヒートシールドの裏面を確認すると、発熱する部品に対してかなりの箇所で熱伝導シリコンが塗布されていることが分かります。基板上の部品も同じです。
で、肝心のお待ちかねのメイン基板のCPU側を確認していきます。先程取り外したCPUバックプレートを取り外せばもう固定されているものはありませんので引き剥がせば液体金属グリスの塗られたCPUを確認することが出来ます。
通常版との差について
さて、PS5 Proの完全分解が出来たところで基板の変更点を確認する前に構造の変化であったり放熱機構の変更点について確認してみたいと思います。
基本的な構造として
- 筐体(外装)
- ヒートシンク
- シールド
- メイン基板
- シールド
- ヒートシンク
- 筐体(外装)
というメイン基板がサンドイッチされるような構造になっていることに変化はありません。製造時のノウハウも引き継げているものと思います。
冷却周りの構造
また冷却機構にも特に設計思想の変更はありません。本体上部の遠心ファン(シロッコファン)で外部から空気を取り込み、メインのヒートシンクに風を送り込んだ後は電源ユニット内部を抜けていくような構造です。
ヒートシンクの構造についても通常版PS5(スリム版)とPro版でどの程度変更点があったか確認していきます。まずパッと見た感じ通常版PS5の初期型からスリム版になったときほどの変更はないようですが、ヒートパイプについてはそこそこ変化がありました。
通常版PS5ではヒートパイプは5本使用されています。それに対してPro版ではなんと7本と2本増えています。当然のことながらヒートパイプの本数が多いほうがそれだけ素早くCPUの熱をヒートシンクのフィンの部分に移動させることが出来ますので、冷却については結構頑張っている感があります。
また、本数以外にも改良されている点があり、通常版PS5では2つあるフィンとCPUの3箇所を経由するように配管されていたヒートパイプが、Pro版では大小の冷却フィンに対して独立で伸びていくような設計になっています。
また、それぞれのフィンにヒートパイプが触れている面積・構造についてもPro版では接触している範囲が多いなど、より効率的に熱を伝える工夫がされています。
ちなみにそれぞれのヒートパイプとCPUのあるベースプレートの接続については、通常版PS5が横向きに並べられているのに対してプロ版では斜めに配置されています。ベースプレート貫通するようなネジが存在するためヒートパイプを避けて配置しなければならない箇所があるのですが、かなり難しい設計をこなしているようです。
ちなみに各ヒートパイプとフィンやベースプレートの接続には従来通りのはんだ付けが用いられていました。実際の所どのように製造されているのかについてはわかりませんが、わりと一般的な方法ではないかと思います。
次にこちらがCPUとは反対側の面のヒートシンクです。
通常版と同じくこちらの面にもやや小ぶりなヒートシンクが配置されています。ヒートパイプ本数が増えていたり取り回しが変更されいていることに加えて、冷却フィンも大きくなっておりやはり冷却能力が強化されているようです。
このヒートシンクは主にメイン基板上の電子部品、特にCPUに電力を供給するための降圧コンバータが発する熱を放熱するために配置されています。通常版PS5ではヒートパイプが途中からヒートシールドの内側に入っていくような形で、直接基板上の部品(インダクタ等)に接触するようになっている一方PS5 Proではそうなっていません。
PS5 Proのこの部分のヒートシンクについてはヒートシールドに乗っているだけの構造です。熱伝導シリコンで張り付いているだけの状態なので簡単に取ることが出来てしまいます。
通常版PS5と同じくメイン基板のこの箇所には降圧コンバータがあるのですが、その熱は一旦全てヒートシールドに伝えられて、その反対側にあるヒートパイプがさらに移動するという構造になっています。
一度ヒートシールドを経由することで熱の移動効率が変わってくる一方で、一度シールドを経由させることで特定の部品以外の熱もヒートパイプで移動することが出来ます。実際の所どちらのほうがより冷却できるのかは不明なためなんとも言えませんが、実際に量産されているということで問題はないのでしょう。
また実際の所、通常版PS5のこのヒートパイプがヒートシールドの中に出たり入ったりする構造というのは、生産ラインにおける組み立てが大変だったりすると思いますので、こういったところの最適化を計った可能性もあります。
ちなみにPro版の降圧コンバータ部分は通常版PS5からある程度設計の変更がありました。
- 電解コンデンサがヒートパイプのある面から反対に移動
- 熱伝導シリコンの塗布されるインダクタの増加(フェーズ数は同じか)
- 電源パターンの拡幅
- 電源パターン部分からも熱伝導シリコンで熱接続
といったような形です。概ねいかに効率的にヒートシールドに熱を伝えるのかという点で改良が行われているものと思いますが、台形に枠どられた電源パターン部分に直接熱伝導シリコンを塗布してヒートシールドに接触させるなどはかなりアグレッシブな設計と言えるでしょう。
メイン基板
メイン基板についてもスリム版のものと比較しながら詳しく見ていきます。
まず印象として先程から述べているように、放熱のために熱伝導シリコンが塗布されている部品が増えた印象です。一部のダイオードやIC部品など、これまで熱伝導シリコンが塗られていなかったモールド部品についてもPro版で熱伝導シリコンが塗布されています。これは表裏共通の事項です。
また、基板を眺めているとゴチャゴチャした印象が無くなりスッキリした様に感じます。これは基板の第一層にあった配線パターンが全て内側の層に入ってしまい、表面にはベタGNDが占める割合が大きくなっていることが理由です。
通常版PS5、スリム版までは基板の第一層目にロジックなどの比較的高周波の配線パターンを配置していました。これに対してPro版ではそういった配線を見えない中間のレイヤーに移動させることでノイズへの配慮や熱関係の設計に対して最適化を計ったものと思われます。
現行の通常版PS5と比較した時に全体の構成として大きな設計変更は見受けられないものの、細かな部品単位で見たりメイン基板の設計を確認するうえでは思ったより変更されている箇所がありました。
スペック面での違い
さて、分解に加えて一応PS5 Proのスペックも確認しながら通常版との違いや何が変わったのか改めてまとめてみたいと思います。
今回はメーカー公称スペックとして本体と一緒に同梱されていたセーフティガイドを確認していきます。
まず一番の変更点であるCPU(とGPUが統合されたAPU、今回はCPUで統一します)についてはAMDのRyzen Zen2 8C16Tとされています。Pro版を発売するにあたってグラフィックス周りなど処理能力の強化はされているはずですが、基本的なアーキテクチャについてはPS5発売当初の2019年から変わらずZen2シリーズが搭載されているようです。
GPUの記載についても16.7TFLOPSのAMD Radeonとなっています。RDNAの表記についても”2″や”3″というバージョン表記は追加されていませんので、こちらも通常版PS5からアーキテクチャが変更されていない気がします。
ただし同じアーキテクチャ(というよりも世代が正しい)の表記であったとしても製造工程、特にプロセスルールの微細化等によって従来のものよりも効率的なチップが採用されている可能性もあります。が、同じ世代の同じアーキテクチャで処理性能を上げているわけですので発熱はモロに増えているものとも考えられます。
性能の上昇に対応するため本体の冷却機構、エアフローの最適化やファン・ヒートシンクの変更など、そういった性能上昇への対応が今回のPS5 Proの主だった変更点なのではないかと思います。
なお、実際にベンチマークを取って比較したわけではないのですが、性能指標としてGPUの処理能力だけで比較すると10TFLOPSから16.7TFLOPSへの向上ですので、実に6~7割程度の性能向上を果たしていることになります。
筐体サイズは多少大きくなったものの、ハードウェアの規模感が従来のPS5とそこまで変わらない中でこれほどの性能向上を実現できているというのはソニーの開発陣も頑張っているのではないかと思います。もちろん半導体の進化もあるとは思います。
RAMについては仕様表記においてもGDDR6が16GB、DDR5が2GBと記載されています。分解して基板に実装されている部品も確認しましたが、このDDR5の2GB分がPS5 Proになって追加されたものです。
また通信の部分にはIEEE(アイトリプルイー)の802.11の「be」というものがあります。ある程度詳しい方なら知っているかもしれませんがこの802.11 **という表記はWi-fiの規格を表しており、この中でも「802.11 be」というのはいわゆる「Wi-Fi7」のことを指します。
2024年になって聞くようになったWi-Fi7について、実際の所これに対応したアクセスポイントはまだ市場に数がなく価格も安くないものが多いのが現状です。今後のことを考えてより最新の規格に対応したという事は分かりますが、据え置き型のゲーム機においてどこまでのWi-Fi性能が必要とされるかを考えると正直微妙と言わざるを得ません。
特にまだ普及し始めて間もない通信規格ということ部品のコストも高いでしょうから、本当に必要だったのかなと若干疑問に思います。
補遺
PlayStation Portal リモートプレーヤーという製品があります。PS5シリーズ上で動作しているゲームを離れたところや外出期からでもリモートで遊ぶ事ができる専用ハードウェアです。
こちらを使用する際にWi-Fi7という高速な規格が活かされているという話がありこのブログ執筆時に軽く調査したのですが、ネット上から確認できる取扱説明書の仕様欄にはacまでの対応と記載されていました。以上です。
ゲームのプレイ時におけるグラフィック処理能力の向上など強化された部分もありつつ、製品そのものの設計といった点ではあまり大きな違いは無いような印象です。
PS5Proを分解してみて(今回のまとめ)
ということで今回はPlayStation 5 Proを分解して現行の通常版と比較をしてきました。
本体の設計において要所要所で変更が行われた部分もありますが、主に冷却ファンの大型化やヒートシンクの構造の変更、それ以外にも通風口の数など全体的に冷却能力の強化に関するものばかりでした。
ただし基板を確認するとCPU以外のメモリや通信部分のチップ、各ICの配置と配線の設計などについても通常版とは異なった印象を受ける設計となっており、直接ゲームに作用しない箇所についてもかなり上位版らしい変更が加えられていました。
価格について
あらためて価格についてまとめておきます。ソニー公式サイト掲載の小売希望価格で
PS5 | PS5 デジタルエディション | PS5 Pro | |
---|---|---|---|
小売希望価格 | 79,980円 | 72,980円 | 119,980円 |
と、通常版と比べて約4万円の上昇を遂げています。また、ディスクドライブについては通常版(スリム版)PS5のものがそのまま使用できる設計ですがこちらについてはPS5 Proでは同梱されたモデルはなく、必要な場合には別途1万1,900円の出費が必要です。
ちなみに細かい話をすると、公式サイトでは縦置きのスタンドが付属しているように見えますが縦置きスタンドは同梱されていません。いいですか、縦置きスタンドは同梱されておらずスタンドを利用したい場合には別途3,980円の課金が必要です。
とりあえず通常版であってもPro版であってもプレイできるゲームに差はありませんので、より綺麗な画質で安定したフレームレートを求める方が検討すればよいハードなのかなと思います。お金がない場合は通常版でも何ら問題はないはずです。
というわけで今回も最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました。まだ見ていないよという方がいらっしゃいましたら是非動画の方もご覧いただけると嬉しいです。
※本記事中における“PlayStation”および一部の関連の用語は株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標または商標です。
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