誰も話題にしない新型PlayStation 5(スリム版)を分解して旧型比較してみた!

最近ソニーからPlayStation 5の新型(以下PS5)の新型が発売された事はみなさんご存知でしょうか。歴代のプレイステーションシリーズでもソニーはその発売からしばらくののち新型PRO版と呼ばれる上位モデルを発売することがありますが、PS5でも少しスリムになった新型が発売されました。

正直あまり世間で話題になっている印象のない新型PS5(以降Slim版と呼びます)ですが、いつものように分解して中身を見ていきたいと思います。

目次

旧型からの変更点

スペック

今回取り上げているSlim版PS5ですが、中身のグラフィック性能や採用CPUに変更があったという情報はありません。自作パソコンでもよく使われているAMD社のRyzen Zen2シリーズのCPUが2020年の初代発売当時から引き続き搭載されているものかと思います。

ただし、CPU(GPU等も統合されているため正しくはSoC)が同じRyzen Zen2シリーズであっても、どうやらマイナーチェンジ時にプロセスルールという配線の細かさみたいなものが微細化されているのでは、という噂も散見されますが、その辺りについての正しい情報は今回入手できていません。

外観

Slim版PS5の外観を確認していきます。小型化はもちろんのこと全体的な印象も大きく変わっています。

まず気がつくのは、PS5の一番の特徴である本体側面の白い板が斜めにスリットが入って、2枚から4枚に変更されていることです。また、旧型では全体がザラザラとした質感でしたが、新型では上半分の2枚については表面の加工がツルツルとした質感に変更されています。

本体前面のUSBポートについてはUSB-AとUSB-Cの構成だった初期型から変更があり、USB-Cが2ポートになっています。こちら表示を見る限りでは SuperSpeed USB 10Gbps に対応しているようです。

裏面を見てみるとUSB-Aのポートが2つと、LAN(RJ45)コネクタとHDMIコネクタが1つづつあります。基本的に初期型から構成は変更されていませんので、周辺機器等のこれまでの資産も使い回すことが出来ます。

ただ構成は変わっていないとはいえコネクタの配置などはスリム版では位置が変更されています。内部の基板位置なども変更になっているかと思いますので、どの程度設計が変更されたのか気になります。

一番の変更点

今回の新型PS5において一番の変更点と言えるのはやはりスリム版と呼ばれていることもあり、その本体の小型化・薄型化です。新型は旧型に比べてボディーが30%以上小型化しており、また、重量も約18~24%軽量化しています。

また、旧型と同じように通常のスタンダードエディションと、ディスクドライブの搭載されていないデジタルエディションが発売されていますが、これについても今回大きな変更点があり、新型PS5ではディスクドライブをユーザーが後から改造・後付できるという構造になっているようです。なお、今回はディスクドライブ搭載版でレビューしていきます。

早速分解していく

それでは本体を分解していきたいと思います。まずは白い外装板からです。

特にネジなどで止まっているわけではないので、力で引きはがすようにして外していきます。一般の人でも内部の埃を掃除したりSSDを追加する際に外すことが想定されている場所ですのでそうそう壊れないような設計になっているとは思いますが、けっこうバキッとなるのが少し怖いです。

白い板がなくなるとこのような感じです。最初はSlim版といってもあまり小型化していないじゃないかという印象もありましたが、実際に外装がなくなってみると結構小さくなっているような印象を受けます。

ディスクドライブの着脱について

新型から着脱が可能になったディスクドライブについても、特にネジなどで止まっているわけではないので引きはがすようにすると簡単に取り外せます。PS5としての動作に最低限必要な本体部分について、初期型と比べるとかなり薄くなっていることがわかります。

ディスクドライブと本体基板の接続部分についてはこのようになっています。専用の端子が噛み合うようになっていて、また、そのすぐ隣にはガイドピンが立っています。
ちなみにスポンジのようなものは導電性となっており、 ディスクドライブ筐体と本体筐体部分を電気的に接続します。

本体にディスクドライブを取り付ける際に端子の破損を防ぐ目的であったり、あとは本体側に受けになる部分を用意することである程度固定するような目的があるのではないかと思います。

ファン周りの変更点

冷却風の取り込みにいついても設計の思想に変更点が見られました。まずファンの部分です。

ファンの吸気部分に指などが入らないようにするガードの役割をしている鉄板ですが、旧型の方は二枚重なるような構造になっています。裏面にも一枚ありますので合計三枚です。

一方でスリム版はどうかというと表裏一枚づつで合計二枚の構成です。枚数が減っているのほか、穴の形状などに変更が見られます。

側面について、旧型ではフィン形状の導風板のようなものがついていました。外装が付いていても隙間から見える部分ですのでデザインの意味も兼ねているとは思いますが、スリム版では導風板はなくなっています。

たぶんコストカットかと思います。

この特徴的なヒダヒダのパーツですが、取外し可能な別部品となっていました。デザインとして変更が加えられたのかコストの問題でオミットされたのかは定かではありませんが、Slim版の方ではこういった外装パーツでのエアフローの制御というのは特に行われていないことがわかりました。

内部を開いていく

ネジについて

さらに内部の基板にアクセスするために黒い樹脂部分を開いていきます。こちらはネジとタッピングビスで固定されています。

ネジの種類が3種類くらいあって最初分解しているときには整理が面倒だなぁと戸惑ったのですが、途中でネジ穴ごとに点のようなマーキングがあることに気づきました。どうやらこの点の数によって使用するネジが整理されているらしく、穴位置ごとにネジを管理せずにまとめて置いてしまっても正しい穴とネジの対応がわかるようになっています。

保証シールによって隠されているネジもこの段階で存在するのでどれくらいの人が恩恵を受けるかは定かではありませんが、分解する人にとってものすごく親切な設計になっています。

分解中に気づいた構造についての話

黒い樹脂のパーツを取り外すと銀色のシールド板が見えてきました。シールド板は基板と一緒に大量のネジで固定されていますが、現時点で外装部品を外す際にネジが無くなっているネジ穴にはマーキングとして十字の打刻がされています。流石ですね。

こちらの面にはヒートパイプに繋がった小さめのヒートシンクが1つと、恐らくWi-Fi用のアンテナ線のようなものが見えています。ヒートシンクについてはシールド板に固定されているわけではなかったので、ある程度風の流れを制御する意味も兼ねて、黒い樹脂で上から押さえつけるような構造になっているものと思われます。

アンテナケーブルについては先端がこのような金属板にはんだづけされていました。また、このケーブルについてよく確認してみると同軸ケーブルになっているようでした。

フロントIOパネルの設計

シールド板についている大量のネジも外して、内部の基板周りを取り出していきます。

外装を取り外しているときに気づいたのですが、本体正面のUSB-Cポートがある部品については、先程2つに開いた黒い樹脂パーツとは別に取り外せるような構造になっていました。コネクタの実装された小さい基板も樹脂部品側に固定されていてまるごと別部品になっているようです。

こちらの基板、USBコネクタと電源ボタンが1つの基板に実装されており、また、高速な信号のやり取りをするためにUSB-Cコネクタへ伸びる部分の配線については等長配線で設計されていました。本体基板との接続ケーブルについてもシールドが貼ってあるなど、ノイズや通信の質に対して相当力の入った作りになっています。

こぼれ話

ちなみに余談ではありますがこちらの部品、旧型では二枚の基板に分割されていました。特にディスクドライブのあるモデルでは電源ボタンとディスクの取り出しボタンが一緒に実装されており、押し間違いが頻発するなどそこそこ評判は悪かったようです。スリム版ではディスクドライブが取り外し可能になった影響もあり、ディスクドライブの挿入口付近に移動されています。

電源ユニットの取り外し

次に本体部品の方ですが、電源ユニットについては引っ張るだけで外すことが出来ます。

こちらのタブ型の端子で電源ユニットと接続されています。電源ユニットに記載されている定格を見てみると100V-240VのCA入力に対して12V31Aを出力しているようです。自作PC用の電源とだいたい同じような出力になっていますが、かなり軽量に作られている印象です。

基板周りのレビュー

シールド板を取り外してみるとこのような形で、CPUの裏側が見えてきます。一部の半導体部品とシールド板は薄い青色の熱伝導シリコンで接するようになっていて、シールド板を介してヒートパイプへと放熱するようになっています。

CPU用の電源回路とみられる部分のパワー半導体やインダクタなどがシールドに効率よく接触するようになっており、またヒートパイプもかなり近くなっていますので、シールド板自体もヒートシンクの一部として熱伝導の役割を持っているような構成です。

基板とシールド板が接する箇所ですが、シールド板がネジで固定されている外縁部については緑色のレジストがかかっておらず、銅箔がむき出しになっています。ただし、実際にこの銅箔がシールド板に接触しているかというとそうではなくて、基板上にポツポツとした接点のようなものが設けられており、こちらがシールド板と接触するような構造になっています。

CPU(SoC)周りの設計について

次に全体を裏返しにしてみると、まず大きなヒートシンクが2つあることがわかります。これらは主にCPUを放熱するためのものかと思います。ヒートパイプが集合している位置にはCPUが存在しています。

また、ヒートパイプと冷却フィンは一部が銀色に濡れている様子がありますので、はんだ付けで固定されています。かなり冷却効率を意識した作りです。

先程の面に戻りますがCPU(SoC)周りの実装について見ていきます。中央にCPUがあってその周りにはぐるっと取り囲むようにメモリ(RAM)が実装されています。他の箇所とは違って特徴的ななめらかな配線パターンが見えますが、これは恐らく等長配線(ミアンダ配線)を意識したものかと思います。

電気信号が銅線のパターンを伝わるのにも実は時間がかかります。光の速度の約半分程度というかなり早い速度で、かつこの10cmにも満たない距離を伝わるだけですが、それでも最近の情報処理の速度においてはそれぞれの信号線に数ナノ秒ほどの到達速度に差が生まれてしまい、致命的なエラーの発生要因となってしまいます。

また、配線パターンがなめらかな曲線を描いていることにも理由があって、パターンがもし直角などカクカクとした状態になっていると、伝わってきた信号の一部が配線の中で反射を起こしてしまい、通信のクオリティが下がってしまいます。(信号がなまる)

こういった理由から実行的な速度が犠牲にならないように、特に高速な情報をやりとりするCPUとRAM周りの配線においては、やや変態チックとも言える様な配線パターンで設計されているわけです。

CPU(SoC)の冷却について

さて、肝心のCPUについても分解して見ていきたいと思います。抑えを外しますが、ここにはCPU用の電源供給用部分のパスコン(積層セラミックコンデンサ)がたくさん実装されています。

肝心のCPUですが、冷却にはやはり液体金属グリスが使用されていました。初期型の発売後にソニー公式から分解動画が出された際にはかなり話題になるなど、PS5を特徴づけている要素かと思います。

恐らく構造としては全く同じで液体金属グリスがCPUのダイに直接塗布されており、また、周辺は黒いスポンジで覆われています。液体金属グリスが漏れていかないような構造となっています。CPU(恐らくシリコンのダイがむき出しになっている)と放熱用のヒートシンクでサンドイッチするような形で、効率よく熱を逃がす構造になっています。

液体金属グリスについて

PS5とは特に関係のない話なのですが、この液体金属グリス、熱伝導率が非常に高い一方で通常PCの組み立てなどで使われるグリスとは違いグリスそのものに導電性があります。一応自作PC用品としても市販されているものもありますが、どこかに漏れていくと基板上でパターンをショートさせたり、また他のグリスとは違い一部の金属に対して侵食性を持っているなど、取り扱いが特に難しい代物だったりします。

取り外したパーツ単位での比較

ここまでパーツを取り外してきましたが初期型PS5とSlim版PS5でどれくらい変更された部分があったのか、パーツ単位で比較していきたいと思います。なお、今回比較に使用している旧型PS5はCFI-1100ですが、同じ旧型の中でも一部部品や設計に製造上の都合でばらつきがあることがわかっていますので、あくまで参考とします。

シロッコファン

まずはシロッコファンから。

旧式はNIDEC(旧日本電産株式会社)が製造しているもののようです。新型ではDELTA ELECTRONICS(デルタ電子)となっていますので、中国メーカー製品に変更されているようです。

フラットケーブルとアンテナの線について

次にアンテナやフレキシブルケーブルの取り回しについて、こちらはかなり改善された様子がありました。

旧型の方ですが、Slim版と比べて外部に接続されているケーブルの本数が多いです。本体上部のものとフロントのUSB基板、そしてアンテナという構成になっています。これがSlim版の方ではどうなっているかというと、先ほど紹介したフロントパネル用のフレキシブルケーブル以外にはWiFi用のアンテナ線しかありません。

また、このアンテナ線の取り回しも大幅に変わっていて、旧型では本体の全面を回り込むようにして電源ユニットに板状のアンテナが取り付けられていました。これはかなり組み立ての難易度が高いのではないかと思います。

旧型から改善されたポイント

フロントパネル用のフレキシブルケーブルも、旧型ではシールド板を取り外した上でないとアクセス出来ないような構造になっていましたが、Slim版ではフレキシブルケーブルの接続部のみシールドが取り外せるカバーが付いた構造になっていて、このカバーを取り外しすればフラットケーブルの脱着ができるようになっています。

このように外部に接続するケーブルの数自体が旧型とSlim版では変わっていますので、組み立て工数的にかなり削減されているのではないかと推測しています。

電源ユニット

電源ユニットについても大きな変化がありました。左が旧型、右がSlim版のものです。形状が大きく変わっています。

重量

重さを計測した所、どちらも約500gと特に大きな変化はありませんでした。

厚みの変化

次に厚みを測っていきます。

旧型は一番厚みのある部分で約42.8cm、Slim版では約32.6cmと1cm程度薄くなっています。重量に大きな差はありませんでしたが、こうして薄い設計にするとなると内部には背の低い部品を使用しないといけないわけですので、かなり大変な設計変更があったのではないかと想像できます。

エアフローを追っていく

ヒートシンク周りとエアフローの流れについて特によく見ていきます。旧型PS5においてもマイナーチェンジを重ねるたびに内部のヒートシンクの設計が変更されるなど継続的に変更が加えられてきた要素ではありますが、Slim版PS5においてはさらに積極的な最適化がなされていることがわかってきました。

ヒートシールド周り

まずは大きなヒートシンクが無い背面(?)側について見ていきます。

旧型の方では小さめのヒートシンクがあるのみで、露出しているヒートパイプはありません(シールド内部で通っている)が、Slim版では電源回路周りの熱を放熱するためのやや大きめのヒートシンクがあります。

どちらのヒートシンクもシロッコファンからの風が黒い樹脂外装によって導かれることで冷却されるような構成になっていますが、旧型ではあまり風が当たらなさそうな配置だったものが、Slim版では大きく改善されているような印象です。

ヒートシンクの冷却効率が大きく変更された

次に電源ユニットがある反対側の面を見ていきます。電源ユニットを取り外すとこのような形となっていて、ヒートシンクの個数、およびその配置からして大きな変化があることがわかります。

どちらのモデルのヒートシンクもシロッコファンの風が効率的に当たるような構成になっていますが、旧型ではシロッコファン下部に大きなスペースが空いています。旧型を最初に設計した当時にはあまり最適化がされておらず、後述するようにヒートシンクの形状について最適化が進んだ結果空いたスペースかもしれませんが、Slim版ではシロッコファンの直近にヒートシンクが2つ置かれる構成に変更されていました。

ヒートシンクの変化について

また、ヒートシンクについてですが、ソニー公式のPS5分解動画(リンク)をみていて、手元の旧型PS5と構造が異なることに気づきました。同じ旧型PS5のなかでも1000→1100→1200とどんどんヒートシンクが小さくなるなど、内部に改善が入っているようです。

ヒートパイプの本数は旧型が4本であったのに対してSlim版では3本になっています。ただしCPUの熱を受け取る部分には独立したヒートパイプがあるのみなど、その取り回しは大きく異なります。

電源ユニットの冷却

電源ユニットですが、どちらのモデルの電源ユニットにも上部と下部にそれぞれ穴が空いており、ヒートシンク周りを流れた風が電源ユニットの内部を通り抜けることで冷却されるような構造になっています。

ですので風の入り口である上部付近に、比較的熱に弱い電解コンデンサなどの部品が配置されており、比較的熱によって影響を受けることのないインダクタ(コイル)やフィルムキャパシタなどが配置されるような構造になっているようでした。

実際に分解してみての感想

ということで今回はソニーから発売されたPS5の新型(Slim版)について、分解と内部構造の変化を見てきました。

ディスクドライブが着脱可能になったという点以外で内部の処理性能などのスペックが大きく変化したというアナウンスは見受けられませんでした。ただし、分解した感想として、Slim版では中身の構造や設計がかなり最適化された印象を受けます。

特にヒートシンク周りの設計についてはその設計思想から変更されていたり、また、ヒートシンクそのもののサイズが小さくなっているなど、コスト減のような工夫もありました。アルミや銅を使用している都合上、ヒートシンクはやはり金額が高くなってしまう部分かと思いますのでコストカットは順当な判断です。

その他にも取り回しのケーブルの本数が彫っているなど部品点数の削減もありましたし、取り回し自体もかなり組み立てやすいように工夫された箇所が見受けられるなど、全体的に改善されていた印象です。

価格について

ただし価格については諸々の最適化とは裏腹にかなり値上がりしています。特にソニーの公式販売価格は旧型に比べるとだいたい6,000~10,000円程度値上がりしており、約6~7万円弱と考えると正直かなり高額な買い物と言わざるを得ません。

部品点数の削減や組立工程の最適化により利益率が向上している可能性もありますが、旧型が発売された2020年当初よりインフレが進行しており、原材料費の高騰など製造コストが上がっているような気もします。

これからPS5を購入しようとする方は小さくなったSlim版を購入するのがよいかとは思いますが、今暫くの間は旧価格の旧世代機も流通するかと思いますので、もし廉価な旧型をみかけたらそちらを購入しても問題はないかとは思います。

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ということで新型PlayStation 5の分解レビューでした。また、今回の記事の元となった動画もYouTubeで見られますので、ぜひそちらも合わせて御覧ください。

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コメント

コメント一覧 (1件)

  • 電源ユニットのサイズがcm表記になってますよ。 mm表記だと思われます。

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