1%精密抵抗買ってみたら誤差2%くらいあった件

皆さんは、市販されている抵抗器には誤差率というものがあることをご存じでしょうか。

工業製品として発生する性能のバラつきを表す値で、抵抗器ではカラーコードの最終桁で表される値です。一般的には炭素皮膜抵抗であれば5%、精密抵抗(金属皮膜抵抗)であれば1%が販売されています。

これらの抵抗部品を電子部品専門店の店頭で直接、あるいは電子部品専門店の通販サイトであるDigiKeyやMouserなどで購入するケースが多いかと思います。しかし、先日Amazonで電子部品が販売されているのを発見しました。

今回はAmazonで販売されている誤差率1%の精密抵抗器の品質を調査していきます。

目次

Amazonで購入した抵抗器

Amazonで販売されている抵抗からレビュー評価の高いものを選んでみます。今回はELEGOOLongrunerという2つのメーカの製品を購入しました。

ELEGOO
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開封してみると、ELEGOOは抵抗値ごとに個別に包装されており、ケースの蓋の裏にはカラーコードについての説明もあって丁寧な印象を受けました。基本的に1つの抵抗値あたり25個入りですが、使用頻度の多い抵抗値については50個ずつ入っています。

Longrunerの方は個別包装はされておらず、1つの袋にすべての抵抗値の種類が入っていました。抵抗値1種類あたり20本ずつでした。また、抵抗値の種類については画像の通りが豊富に取り揃えてありました。欲しい抵抗値が手元に無い場合に、直列や並列で目的の抵抗値を作る手間が省けるというメリットがあります。

外観の比較

ELEGOOとLongrunerの製品を詳しく比較していきます。

両社から同じ1kΩの抵抗を並べてみると、その違いがわかります。

Longrunerの抵抗はELEGOOと比較してがリード線が細めです。また、ELEGOOのリード線は磁石に付きません。リード線を少し削ってみると銅色が出てきました。なので、おそらく材質はスズめっきされた銅であると思われます。一方で、Longrunerの方は磁石に付くため、同様にスズめっきされた鉄であると考えらえます。

一般的に、鉄は銅よりもコストが安くなります。しかし電気的な特性を見てみると銅は鉄と比較して導電率が高くなります。リード線部分についてはElegooの抵抗が優秀です。

抵抗値の比較

次に抵抗値について比較します。

正確を期すためにデジタルマルチメータを使用して4端子測定を行います。今回は、測定作業効率を改善するため、このような治具を作成しました。ここに計測器の端子を取り付け、抵抗器を押し当てて計測します。

治具の有無による測定値を比較したところデジタルマルチメータの読みの5~6桁目までは同じでした。なので 今回の抵抗測定では治具が測定値に与える影響は無視できるものとしています。

この治具を使って抵抗値を計測し、抵抗値の分布を表すヒストグラムを作成します。

まずELEGOOの方から計測しました。
定格抵抗値は220Ω、1kΩ、47kΩで誤差率はそれぞれ±1%。サンプル数は25本または50本です。ヒストグラムの横軸は抵抗値の誤差率、縦軸はその本数です。

正規分布の形になっています。サンプル数は非常に少ないのですが、ある程度の品質の安定性はあるように思われます。

Longrunerについても計測してみました。こちらはサンプル数がさらに少なく20本です。

定格値である誤差率±1%から逸脱しています。また、分布も正規分布ではありません。サンプル数が20と少ないので断言はできませんが、品質が不安定であるように見受けられます。

温度係数の比較

金属は一般的に正の温度係数を持っていて、温度が上昇すると抵抗値が上昇します。これは金属原子の格子振動が大きくなり、自由電子が流れにくくなるためです。

では抵抗器の温度を上げたらどうなるでしょうか。ELEGOOの1kΩ抵抗器にヒートガンで熱風を当ててみました。抵抗にヒートガンの熱が当たると画面上に表示されている抵抗値のグラフが下がっています。すなわち、温度係数がマイナスの値であることがわかります。

一般的な抵抗器のデータシートを読んでみると、温度係数はプラスマイナスの範囲の値を取り得るということが記載されています。つまり、温度が上がると抵抗値が下がることもあれば上がることもあるということです。 

参考:KOA 塗装絶縁形金属皮膜固定抵抗器MFシリーズデータシート
https://www.koaglobal.com/-/media/Files/KOA_Global/product/commonpdf/mf.pdf

まとめ

今回は、Amazonで販売されている抵抗器の特性や品質について調査しました。Elegooの抵抗は定格通りの抵抗値(誤差±1%)ををもっていましたが、一方でLongrunerは定格から外れた抵抗値を持っていました。

個人的な所感としては、趣味の電子工作のような用途であれば十分に使えると感じました。ただ、だし、スペック詐欺なども一部の商品であることが今回の検証でわかりました。

このような電子部品は、販売店のブランドではなく、どこで製造された部品であるかが重要になります。

今回取り上げた製品は販売店が別のメーカからのOEM供給を受けて、販売店のブランドを付けて販売しているものだと思われます。このような販売形態だと消費者が製造元を知ることは困難です。実際の工業製品にAmazonで販売されている電子部品を使うことは無いかと思いますが、今回調査した抵抗器のように定格の公称値を満たしていない可能性があります。

今回は金属皮膜抵抗を扱いましたが、炭素被膜抵抗であれば電子部品専門の小売店で1袋100本入り100~300円程度で販売しています。個人の電子工作レベルで色々な抵抗値を揃えようと思うと、数百円とはいえコストもかかりますし、管理も大変になります。今回紹介したもののセット販売の商品というのは、1つの抵抗値あたりの本数は少なくなりますが、多数の抵抗値の種類を手に入れることができるという点は大きなメリットになります。

以上を踏まえたうえで、電子部品を購入するときは自分の用途や目的、必要な精度をよく考えて、販売店ではなく製造元を見て製品を選ぶと良いかと思います。

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